2歳未満に発症したアトピー性皮膚炎の予後: コホート研究

小児期のアトピー性皮膚炎は、どれくらい良くなっていくのでしょうか?

■ 小児期のアトピー性皮膚炎は自然軽快が多いと言われています。

■ 台湾のコホート研究の結果ではありますが、地政学的に近いこともあり、本邦でも参考になるのではないでしょうか。

 

PECO
P: 2歳までに発症した、台湾出生のアトピー性皮膚炎児1404名(男児56.6%、女児43.4%)
E: -
C: -
O: 10歳までにどれくらい寛解するか

 

Hua TC, et al. The natural course of early-onset atopic dermatitis in Taiwan: a population-based cohort study. Br J Dermatol 2014; 170:130-5.

結果

■ アトピー性皮膚炎の初回診断時の月齢は、33.0%(463例)は生後6ヵ月未満、25.0%(351例)は6-12ヵ月、42.0%(590例)は12-24ヵ月だった。

■ アトピー性皮膚炎の初回診断時に10.5%はアレルギー性鼻炎と診断され、8.3%は喘息と診断され、全体として16.0%が呼吸器アレルギー(喘息か鼻炎)と診断された。

疾患期間1年未満が19.4%、4年未満が48.7%であり、疾病期間の中央値は、1523日(4.2年)であり、追跡期間中、69.8%は寛解した。

論文から引用。追跡期間中、69.8%は寛解。しかし、その後は横ばい。

■ 性、発症年齢、アレルギー性鼻炎(AR)や喘息は疾患経過に有意な影響を示さなかった。

 

「7割も良くなる」と受け取るのか?「3割も治らないのか」と受け取るか?それとも、アトピー性皮膚炎さえ良くなればいいのか?

■ 台湾でのほとんどすべての医療行為に関し、今回の研究のデータベースに含まれるそうで、そのデータベースを用いた前向きコホート研究となるそうです。

■ 2歳未満発症のアトピー性皮膚炎は、10歳まで経過を診ていくとして7割は寛解するという結果です。

■ ただし、これを「7割も良くなる」と受け取るのか、「3割も治らないのか」と受け取るかは受け取る人によって異なるでしょう。

本論文でも、「there were ”also” another 30.2% of patients still seeking medical help for AD after 8 years of age」と述べられており、3割”も”キャリーオーバーすると危惧されていました

■ 以前、成人における横断研究で、アトピー性皮膚炎で受診した成人の3割以上が2歳未満に発症したADであったというドイツの報告をご紹介しました。すなわち、成人までひっぱってしまうと、なかなか治ってこないと言えます。

また、アトピー性皮膚炎は、重症であればあるほど、早く発症するほど、罹病期間が長いほど、他のアレルギーを発症するリスクを高めます。

■ アトピー性皮膚炎の重症度を早く低下させ、その期間を短くすることがとても重要ではないかと、私は考えています。

■ 最近、小児期を超えてアトピー性皮膚炎が持続すると、ほぼ寛解しなくなってくる(治療が無駄という意味ではありません)という報告がありましたので、またご紹介する予定です

 

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