母乳中IL-1βは子どもの湿疹発症を減らすかもしれない: 出生コホート試験

母乳とアレルギー疾患発症には矛盾する結果が報告されています。

■ 母乳の質が、子どものアレルギーに関与するかもしれないという報告があります。

■ この論文はコホート試験から採取した母乳のサイトカイン・ケモカインを調べたものです。もちろん、母乳栄養自体を否定するものではありません。

 

P: ハイリスク出生コホート試験であるCOPSAC2000に参加した母の母乳223サンプル

E: 母乳中の炎症性および免疫調節性サイトカインとケモカイン 19種類

C: -

O: 3歳までの湿疹と再発性喘鳴発症に影響するか

 

結果

■ 研究群の3歳までの湿疹累積有病率は39%(86名)、再発性喘鳴は、19%(43名)で診断された。

■ 1ヶ月時の約10mLの母乳が採取され、各種サイトカイン・ケモカインが検討された(CCL2 (MCP-1), CCL4 (MIP-1β), CCL5 (RANTES), CCL17 (TARC), CCL22 (MDC), CCL26 (Eotaxin-3), CXCL1 (GRO-α), CXCL8 (IL-8), CXCL10 (IP-10), IFN-γ, IL-1β, IL-4, IL-5, IL-10, IL-13, IL-17A, TGF-β1, TNF-α, TSLP)。

母乳中IL-1βの増加(≧0.7 pg/mL)は3歳前の湿疹リスクを有意に減少させた(調整ハザード比[aHR]=0.41; 95%信頼区間[CI] 0.24-0.68; p < 0.001)

■ さらに、成因分析では母乳中IL-1β・IL-17A・CCL17高値とCXCL1・TSLP低値は湿疹に保護作用を示唆した(aHR=0.82; 95%CI=0.68-0.98; p=0.03)。

■ 母乳中IL-1β高値は、世帯収入が高い家庭対低い家庭(54%対28%、p=0.017)、自然出生対帝王切開(41%対23%、p=0.026)で認められた。一方、再発性喘鳴に対する関連は認められなかった。

 

母乳の内容にも注目しなければならないのかもしれない。

■ 母乳中のIL-1βが児のアトピー性皮膚炎発症を抑制するとまとめられます。

■ IL-1βとIL-17は好中球を助ける作用をすることで保護効果があるのではないかとしており、一方で、研究の限界として、IL-1βの直接的な効果よりも、母体の免疫状態の代替指標になっている可能性があるとも述べられていました。

■ 本研究は母乳とその後のアレルギー疾患の発症に関して、あらかじめ定義されたアルゴリズムに則りおこなった初の臨床コホート試験だそうです。

■ 母乳の影響に関しては、まだ良くわかっていないことも多いですが、現状では4-6ヶ月の完全母乳はメリットがあり、それ以上の長期完全母乳は必ずしも良い結果とはなっていません。

■ 母乳の成分を一般診療としては使用できませんし、現状では完全母乳は4-6ヶ月程度で離乳食を始めていく指導しかないかなと思っています。

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