topic
■ 以前、皮膚バリア機能低下をきたしやすい素因を持っていると食物アレルギーを発症しやすいという報告をご紹介いたしました。
皮膚バリア機能低下をきたしやすい素因を持っていると食物アレルギーを発症しやすい: コホート研究
■ その報告では、フィラグリン遺伝子という皮膚バリアをコードする遺伝子異常を持つ児では食物アレルギーを発症しやすいという結果でした。
■ 今回は、ネザートン症候群という疾患でみられる、SPINK5遺伝子多型に関しての研究結果です。
E: SPINK5遺伝子多型あり
C: SPINK5遺伝子多型なし
O: SPINK5遺伝子多型は、IgE依存性食物アレルギーと関連するか
結果
■ SPINK5(~61kb)を含む~263kbにわたる領域における71個の"tag" single nucleotide polymorphisms (tag-SNPs)の遺伝子型解析を行った。
■ 2ヶ月時に、一部の参加者(150人)から経表皮水分蒸散量(TEWL)が計測された。
■ SPINK5多型rs9325071(A→G)は、食物負荷試験で証明された食物アレルギーに関連していた(P=0.001 | OR=2.95 | CI=1.49-5.83)。
■ 主成分修正により、4つの独立したコホート検体でさらに追試された(食物アレルギー群203人、非食物アレルギー群330人、計533人; 平均2.5歳)。
■ 追試でもSPINK5多型と食物アレルギーの関連が維持されており(P=0.007 | OR=1.58 | CI=1.13-2.20)、メタアナリシスでも関連が確認された(P=0.0004 | OR=1.65)。
■ rs9325071多型は、すでに一般公開されている遺伝子型データにおける皮膚のSPINK5遺伝子発現の低下と関連しており、TEWL高値にも関連するという予備的なエビデンスが示された。
コメント
■ SPINK5多型rs9325071と、食物負荷試験で証明されたIgE依存性食物アレルギーには関連があるとまとめられ、このSPINK5多型と食物アレルギーに関する報告としては、本報告が初めてなのだそうです。
■ セリンプロテアーゼインヒビターをコードする遺伝子SPINK5は、ネザートン症候群 (先天性魚鱗癬、アトピー性皮膚炎、毛髪の異常などを併発する疾患)の原因遺伝子であり、フィラグリンの発見と同様、皮膚バリアからのアプローチといえます。
■ 様々な疾患で、遺伝素因との関連が報告されるようになりましたが、アレルギー疾患にもその波が訪れているといえるでしょう。
今日のまとめ
✅食物アレルギーに関係する遺伝子である”SPINK5”が見つかり、ネザートン症候群の責任遺伝子でもあった。