集団での誤食をへらすために、どうすればよいか?
■ 本邦の幼稚園や保育園でも、”ピーナッツなし”の献立にしている園はすくなからずあるようです(どれくらいの割合かは知りませんが)。
■ 実際は、”除去の指導”のみでは、アレルギー反応をゼロにすることは不可能であり、偶発的な摂取による症状も少なからずあることを、以前ご紹介いたしました。
除去食中の誤食は頻繁に起こっており、不十分な治療を受けている: コホート試験
卵・乳アレルギー児の偶発的・意図的な摂取によるアレルギー反応: コホート研究
■ ピーナッツに関しては、米国のほうがさらに大きな問題であり、今回ご紹介するのは、学校における”ピーナッツなし”の方針が、アドレナリン自己注射(エピペン)の使用率に影響するかという報告です。
E: ピーナッツなしの方針
C: -
O: 学校でのピーナッツによるアナフィラキシーが減るか
結局、何を知りたい?
✅学校での”ピーナッツなし”の方針が、アナフィラキシーを減らすかどうかということを知ろうとしている。
Bartnikas LM, et al. Impact of School Peanut-Free Policies on Epinephrine Administration. J Allergy Clin Immunol 2017. [Epub ahead of print]
結果
■ (1)マサチューセッツ公立学校すべてにおけるアドレナリン投与率と、(2)マサチューセッツ公立学校の看護師調査により、2006-2011年からの学校におけるピーナッツなしの方針が報告され、方針に基づいた「ピーナッツなし」かどうかを自己申告された。
■ ピーナッツを制限する方針の有無にかかわらず、学校ごとにアドレナリン投与率が比較された。 ピーナッツの制限をする方針である学校の比率は、研究時期によって有意な変化はみられなかった。
■ ピーナッツなしの方針である学校の自己評価は、変動した。 ピーナッツなしの方針は、アレルギー反応の完全な欠如と関連しなかった。
■ ピーナッツなしの方針の学校も、ピーナッツが学校で提供されるのを禁止したり家から持参するようにしている学校も、ナッツアレルギー反応があった。
■ 家からのピーナッツを制限する方針は、アドレナリン投与率に影響しなかった。
■ ピーナッツなしのテーブルがある学校は、ない学校に比較して、アドレナリン投与率が低かった(10,000人の学生につき、それぞれ0.2と0.6; P=0.009)。
結局、何がわかった?
✅”ピーナッツなし”という方針は、エピペンの使用率に影響はしなかったが、”ピーナッツなしのテーブル”を用意している学校ではエピペンの使用率が低くなった。
集団での「厳格な除去」をしても誤食は起こりうるが、配慮をすることでそのリスクは減る。
■ この研究結果を評価するのは難しいですが、学校における食物アレルギーの安全性を改善する学校での方針を、エビデンスベースで導く可能性がある最初のステップであるとされていました。
■ 特に、”ピーナッツなしのテーブル”に焦点をあてる方針が、ピーナッツやナッツ類曝露によるアレルギー反応やアドレナリン投与率を低下させる可能性があるとされています。
■ しかし、ピーナッツなしの方針の成功は、この方針が適切に、一貫して実施されることに依存するだろうとされています。
■ そして、結局はこの方針に関わらず、学校で適切な治療のためにアドレナリン投与を速やか行うべきだとされています。
今日のまとめ
✅学校における”ピーナッツなし”の方針は、”ピーナッツなしのテーブル”を用意することがエピペンの使用率を下げるかもしれない。しかし、結局は”ピーナッツなし”の方針を適切に実施できるかどうかに依存する。