Kojima R, et al. Factors associated with steroid phobia in caregivers of children with atopic dermatitis. Pediatr Dermatol 2013; 30:29-35.
ステロイド忌避は一般的。
■ 中等症以上のアトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬の使い方は、必ずしも簡単ではないと思っています。実際の使用に関しては、使用回数や1回の使用量、とくに連日使用する場合は短期間で再診いただくことが必要になるでしょう。
■ 漫然と使用しないために、医師側も気をつける必要があり、そういった意味で「簡単ではありません」。
■ そういった意味では、私も「ステロイド外用薬嫌い」とも言えそうですが、一方で、アトピー性皮膚炎の重症度が高くなればなるほど、罹病期間が長くなればなるほど、低年齢で発症するほど、他のアレルギー疾患も発症するリスクは上がっていくことが報告されています。
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■ だから、ステロイド外用薬を漫然と使用しないために、スキンケアを含めた指導を繰り返す必要があり、外来はいくら時間があっても足りません。
■ 確かに、アトピー性皮膚炎は自然軽快傾向のある疾患ではあります。一方で成人で定期受診している患者さんの半数以上は小児期に発症しています。治っていない患者さんも沢山いらっしゃるのです。
■ アトピー性皮膚炎の罹病期間を短縮し、重症度を早く下げる必要があり、そのためにはステロイド外用薬は必要です。そのためには、患者さんがなぜステロイド忌避になるのかを知っておく必要があるでしょう。
E: ステロイド忌避に対するアンケート調査
C: -
O: ステロイド忌避になっているリスク因子は何か
結局、何を知りたい?
✅ステロイド忌避になる要因を知ろうとしている。
ステロイド忌避になるリスク要因は、女児・父親のアトピー性皮膚炎・クリニック受診の頻回の変更。
■ アトピー性皮膚炎(AD)重症度は、SCORADで評価し、寛解0、軽度1-25、中等症25-49、重症≧50の4つのカテゴリーに分類した。
■ ステロイド忌避は、「あなたの子どもの皮膚にステロイド外用薬を使用することに同意しますか?」と尋ねることによって評価された。
■ 「決して」もしくは、「回避出来るならばステロイド外用薬を使用したくない」と答えた保護者は、ステロイド忌避と定義された。
■ 全体として、保護者の38.3%は、子どもに対するステロイド外用薬使用を忌避した。
■ 女児(調整オッズ比 [aOR] = 1.85,95%CI = 1.20-2.85)、父のAD歴(aOR = 1.94,95%CI = 1.03-3.58)、クリニックの頻繁な変更(aOR = 1.25,95%CI = 1.03-1.53)はステロイド忌避と有意に関連していた。
■ ADの重症度は、ステロイド恐怖症と相関しなかった。
結局、何がわかった?
✅ステロイド忌避(ステロイド嫌い)になるリスク要因として、女児、父親のアトピー性皮膚炎、診療所の頻回の変更歴があった。
ステロイド嫌いは一般的。その上でステロイド外用薬を減らしていくためにスキンケア指導を繰り返し、信頼を得る必要がある。
■ ステロイド外用薬(TCS)は、アトピー性皮膚炎(AD)のファーストラインの治療薬ですが、一部の患者はTCSの使用に不合理な恐れと不安を表出される場合があり、ステロイド忌避と呼ばれます。
■ そして、ステロイド忌避は、患者のTCS治療のアドヒアランスを低下させ、ADのコントロールが不十分になり、睡眠障害、喘鳴、不登校などの身体的、心理的問題を惹起し、これはTCSの悪影響よりも深刻な問題であると述べられています。
■ この研究の知見は、ADの重症度にかかわらず、AD患者の性別や臨床背景に対する注意が治療の成功に重要であるとされています。
■ ステロイド忌避の予測因子の1つに、父親のADの病歴であることが示されました。多くのADの介護者が日本では母親であるためであるためとしており、母は医師からTCSに関する正しい知識を得る機会が増え、ステロイド忌避が軽減される可能性があるとしています。
■ 一方、父親は医師と接触する機会が少ないため、ステロイド忌避が残るのかもしれず、先行研究では家族や親戚もステロイド忌避の主要な原因という報告もあるそうです。
■ また、診療所の頻繁な変更は、日本では紹介なしにクリニックを変更できるため、治療失敗や医療サービスへ不信を示唆しているのではないかとされていました。
■ つまり、ステロイド忌避になる原因の一旦は医療者にもあるということです。ステロイド外用薬を長期使う場合は、あたらめて説明しながら、患者さんの考えを傾聴しつつ信頼関係を構築しながら使うべきと思います。
今日のまとめ!
✅ステロイド忌避になるリスク要因として、女児、父親のアトピー性皮膚炎、診療所の頻回の変更歴があげられ、情報提供と説明が必要であると予測された。