小児の慢性湿性咳嗽にペニシリン2週間投与が効果がある: ランダム化比較試験

 小児の慢性咳嗽の原因になり、抗生剤の使用が必要な遷延性細菌性気管支炎 (PBB)。

■ 先日、遷延性細菌性気管支炎 (PBB: protracted bacterial bronchitis)に関して、ご紹介させていただきました。

慢性咳嗽に抗生剤?遷延性細菌性気管支炎 (PBB: protracted bacterial bronchitis)

■ 抗生剤の濫用は厳に慎むべきではありますが、一方で抗生剤が必要な病態に対して使用しないのも問題であるはずです。

■ PBBの提唱者であるMarchantらが、RCTを行っていたので、少し古い論文ですがご紹介させていただきます。

 

Marchant J, et al. Randomised controlled trial of amoxycillin clavulanate in children with chronic wet cough. Thorax 2012; 67:689-93.

3週間以上続く湿性咳嗽のある小児50人に対し、クラバモックス群とプラセボ群にランダム化し、それぞれ2週間投与を行った。

背景

■ ガイドラインによる推奨にもかかわらず、小児の慢性湿性咳嗽に対する抗生物質の有効性に関し、無作為化比較試験データは公開されていない。

■ 慢性湿性咳嗽を呈する小児の多くは、複数のガイドラインで認識されている細菌性気管支炎(PBB)を長期間持続させている。

■ われわれは、アモキシシリン-クラブラン酸塩(注;商品名クラバモックス)の2週間投与が、小児の慢性湿性咳嗽の治療に有効であるという仮説を検証するために、1:1プラセボランダム化比較試験を実施した。

 

方法

慢性的湿性咳嗽(> 3週間)のある小児50人(年齢中央値1.9歳、IQR 0.9-5.1)を、クラブラン酸アモキシシリン1日2回(22.5mg / kg /dose)またはプラセボ1日2回を2週間投与にランダム化した。

■ プライマリアウトカムは、治療開始時に比較して、治療14日以内のvalidationされた口頭による咳スコアが75%以上低下するか、咳嗽が3日以上ないと定義された「咳嗽の軽快」であった。

■ 参加した小児は、試験開始時に気管支鏡検査および気管支肺胞洗浄(BAL)が実施された。

 

結果

アモキシシリン-クラブラン酸塩群(48%)は、プラセボ群(16%)と比較し、咳の軽快率が有意に高かった(p = 0.016)

 

■ 観察された割合の差は0.32(95%CI 0.08〜0.56)だった。

■ 治療後、アモキシシリン-クラブラン酸塩群の咳記述スコアの中央値 0.5(IQR 0.0-2.0)は、プラセボ群の2.25(IQR 1.15-2.9)より有意に低かった(p = 0.02)

■ 治療前のBALは群間に有意差はなく、大多数の小児においてPBBとして矛盾はなかった。

 

結論

■ アモキシシリン-クラブラン酸塩の治療2週間は、慢性湿性咳嗽に罹患している小児の大多数において咳の軽快を達成する。

■ BALの結果は、これらの小児において、多くの場合PBBの診断を支持する。

 

結局、何がわかった?

 ✅3週間以上続く乳幼児(中央値1.9歳)の湿性咳嗽に対し、クラバモックス2週間内服群(48%)は、プラセボ群(16%)と比較し、咳の改善率が有意に高かった(p = 0.016)。

 

 

乳幼児期の湿性慢性咳嗽には、抗生剤投与が必要な群がある。

■ 遷延性細菌性気管支炎 (PBB)は、まだ本邦では馴染みのない疾患でしょう。

■ 急性上気道炎に対し抗生剤を投与することは、7000人に投与して、「治療可能な」肺炎や扁桃周囲膿瘍を約1名減らす程度という報告があります。

軽症の呼吸器感染に対して抗生剤を予防的に使用する意味はあるか?

■ 今回のセッティングは、中央値1.9歳の乳幼児に対し、3週間以上の湿性咳嗽がある患児に対する研究であり、選択された群であることは注意を要します。

■ 秋口や春先は、長期間咳嗽が続くと受診される患者さんが増加しますが、多くは上気道炎の繰り返しや副鼻腔炎と考えていました。それらの中にはPBBが隠れている可能性があることを頭に入れておくべきだろうと思いました。

 

 

 

今日のまとめ!

 ✅乳幼児の湿性咳嗽に対し、クラバモックス2週間内服は、咳の短縮に役立つ可能性がある。

 

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