Keet CA, et al. The safety and efficacy of sublingual and oral immunotherapy for milk allergy. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2012; 129:448-55. e5.
経口免疫療法と舌下免疫療法。どちらが優れる?
■ 以前、ピーナッツ免疫療法に関し、経口免疫療法(OIT)と舌下免疫療法(SLIT)でどちらか効果的かを示した報告を御紹介いたしました。
■ その時に少し言及したのですが、今回は、牛乳に関して、OITとSLITを比較した報告を御紹介いたします。
6〜17歳の牛乳アレルギー患児30人を、舌下免疫療法のみ、舌下免疫療法から少量経口免疫療法もしくは大量経口免疫療法の3群にわけて検討した。
背景
■ 経口免疫療法(OIT)および舌下免疫療法(SLIT)は食物アレルギーの潜在的治療法であるが、最適な投与方法、作用機序、および治療期間は未だ不明である。
目的
■ 我々は、牛乳(CM)アレルギーの治療のためのOITおよびSLITの安全性および有効性を検討した。
方法
■ 我々は、CMアレルギー児をSLIT単独またはSLITとOITに無作為に割り付けた。
論文から引用。前例30例を10例ずつにランダム化。
■ 二重盲検プラセボ対照食物負荷試験、およびSLITによる初期の漸増を実施後、参加者はSLITによる漸増を乳タンパク質7mg毎日投与継続、またはOITを乳タンパク質1000mg(OITB群)または2000mg(OITA群)の開始にランダム化された。
論文から引用。3群のプロトコール。
■ 12週間および60週間の維持後、乳タンパク質8gの負荷試験が実施された。
■ 60週後の負荷試験をクリアした場合。治療は中断され、1〜6週間後に再度の負荷試験を繰り返した。
■ メカニズム的な相関として、エンドポイントにおける皮膚プリックテストおよびCM特異的IgEおよびIgG4、好塩基球ヒスタミン遊離、CD63発現、CD203c発現、細胞内脾臓チロシンキナーゼレベルの測定が実施された。
結果
■ 6〜17歳のCMアレルギー患児30人が参加した。
■ 治療後、SLIT群の10人のうち1人、SLIT / OITB群の10人のうち6人、OITA群の10人のうち8人が牛乳蛋白質8gの負荷試験をクリアした(P = .002、SLIT vs OIT)。
■ 除去後、15人のうち6人(OITB群の6人中3人、OITA群の8人中3人 [2例はわずか1週間の除去後])が再度負荷試験陽性となった。
■ 副反応率は両群で同様だったが、全身反応はSLITよりもOITによく見られた。
論文から引用。副反応はSLITよりOITに多い。
■ 治療終了時までに、CM皮膚特異的検査結果、CD63、CD203c発現は減少し、CM特異的IgG4はすべての群で増加した。
論文から引用。多くのデータの変化は同様だった。A:SLIT / SLIT群 B:SLIT / OITB群 C:SLIT / OITC群。
■ しかし、CM特異的IgEおよびヒスタミン遊離レベルはOIT群でのみ低下した。
結論
■ OITは、SLIT単独よりCMに対する脱感作の方が効果的であったが、より全身的な副作用を伴った。
■ 一部の症例では治療から1週間以内に臨床的脱感作が失われた。
結局、何がわかった?
✅経口免疫療法(OIT)は、舌下免疫療法(SLIT)より、目標用量への達成率が高かった。
✅全身的な副反応はOITはSLITより高率だった。
経口免疫療法。安全性をとるか、有効性をとるか。
■ 最近は経皮免疫療法(EPIT)もでてきていて、食物アレルギーの免疫療法のルートは複数になってきています。”経口”免疫寛容とも限らなくなってきているといえましょう。
ピーナッツ経皮的免疫療法(EPIT)は有効である: ランダム化比較試験
■ さらに、経リンパ節免疫療法というアグレッシブな免疫療法のルートの報告もされています(食物アレルギーに対してではありませんけど)(Senti G, World Allergy Organization Journal 2015; 8:9.)
■ それぞれ、有効性と安全性に差があり、また、EPITは「維持に有効」なのではないかという報告もあります。
■ 「どれが良い」というより、「重症度に応じ、また、食物アレルギーの治療のステージに応じ、投与ルートを選択する」といった方向になっていきそうに思います。
今日のまとめ!
✅OITはSLITより有効性は高いようだが、副反応は多い。