経口免疫療法にプロバイオティクスを併用するメリットはあるか?

食物経口免疫療法において、プロバイオティクスを併用すると有効性が上がるかもしれないという報告があります。

■ 昨日のブログにUPした、卵免疫療法の中断後の再燃を検討した検討に引き続き、JACI(米国免疫アレルギー学会雑誌)に発表されていた免疫療法の総論(Berings M, Journal of Allergy and Clinical Immunology 2017; 140:1250-1267.)に混じっていた、まだこのブログにUPしていない論文をもう一つご紹介いたします。

■ Beringsらのレビューに取り上げられているその他の食物免疫療法に関する論文は、このブログにすべてUPしていると思います。なお、このTangらの論文は全文フリーで読むことが可能です。

■ プロバイオティクスを併用すると経口免疫療法の有効性が上がるかもしれないという報告があります。これは、抗菌薬を使用すると、食物アレルギーが増えるという報告の裏返しかもしれません。

 

 

Tang ML, et al. Administration of a probiotic with peanut oral immunotherapy: a randomized trial. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2015; 135:737-44. e8.

 ピーナッツアレルギー患児62人を、ピーナッツ+プロバイオティクス群もしくはプラセボ群にランダム化した。

背景

■ 経口免疫療法(OIT)に関する細菌アジュバントの同時投与は、食物アレルギーのための潜在的治療として示唆された。

 

目的

■ ピーナッツOITにおけるプロバイオティクスによる併用療法を評価する。

 

方法

■ ピーナッツアレルギーのある小児(1-10歳)において、プロバイオティックスであるLactobacillus rhamnosus CGMCC 1.3724を併用したピーナッツOIT(プロバイオティクスおよびピーナッツ経口免疫療法[probiotic and peanut oral immunotherapy;PPOIT])の二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を行った。

■ プライマリアウトカムは、治療を中止して2〜5週間後のsustained unresponsiveness(SU;持続性の無反応)の誘導であった(可能性があるSUと称される)。

■ セカンダリアウトカムは、脱感作、ピーナッツ皮膚プリックテスト、特異的IgE抗体価、特異的IgG4抗体価だった。

論文から引用。研究フローチャート。

 

結果

■ 62人の小児をランダム化し、年齢(≦5 か > 5歳)およびピーナッツ皮膚プリックテスト径(≦10 か > 10 mm)で層別化し、56人が試験終了した。

■ 試験開始時の両群は類似していた。

■ PPOIT群 82.1%およびプラセボ群 3.6%はのSUが達成された(P <.001)。

■ 7人がSUを達成するために9人の介入が必要だった(治療に必要な数[number needed to treat;NNT] 1.27; 95%CI 1.06-1.59)

論文から引用。研究結果。

■ 参加者のうち、PPOIT群 89.7%、プラセボ群 7.1%が脱感作を達成した。

■ PPOITは、ピーナッツ皮膚プリックテスト反応およびピーナッツ特異的IgE抗体価の低下、ピーナッツ特異的IgG4抗体価の増加と関連していた(すべてP <.001)。

■ PPOIT群には、多くの有害事象が報告された

論文から引用。PPOIT群は副反応が多い。

 

結論

■ これは、ピーナッツアレルギー患児における、プロバイオティクスとピーナッツOITの同時投与とSUを評価した最初のランダム化プラセボ対照試験である。

■ PPOITは、SUおよび免疫変化の誘導に有効であり、ピーナッツ特異的免疫反応の調節を示唆している。

■ 再度のピーナッツ除去がより長期間続いても耐性が持続するかどうか、また、プロバイオティクスとOITの相対的な寄与を明らかにするために、さらなる検討が必要である。

 

結局、何がわかった?

 ✅プロバイオティクスを併用したピーナッツ経口免疫療法群は 脱感作は89.7%、プラセボ群 7.1%を達成した。

 

 

 プロバイオティクスの同時投与は経口免疫療法の結果に影響する?

■ この論文はpublishされたときに読んだ覚えがあり、経口免疫療法に関してプロバイオティクスの投与ありなしを見たものと考えて読み始めたら違ったなと思った覚えがあります。ただし、この89%の脱感作の達成は、先行研究より良いということです。

■ プロバイオティクスや腸内細菌叢が免疫寛容誘導に影響するというデータは別にありますし、抗生剤投与が食物アレルギー発症リスクに影響するという報告もあります。

■ 例えば抗生剤を使用した後などはプロバイオティクスを長めに投与するなど、応用できるかもしれません。

■ 気になったのは論文の方法で、フェーズ9から24までを2週間ごとに増量しており、7.5ヵ月で増量するという計画でした。やや急ぎすぎの印象で、有害事象が多いのはそのせいかもしれないと思いました。

 

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今日のまとめ!

 ✅ピーナッツ経口免疫療法にプロバイオティクスを併用する意味はあるかもしれないが、本検討ではその答えが提示されたとはいえない。しかし、期待される。

 

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