保湿と入浴。
■ 入浴とアトピー性皮膚炎の関連は、明らかになっているとはいえません。
■ さらに、入浴後の保湿塗布に関して、どれくらいの間隔で塗布するかも、明らかになっているとはいえません。
Chiang C, Eichenfield LF. Quantitative assessment of combination bathing and moisturizing regimens on skin hydration in atopic dermatitis. Pediatric dermatology 2009; 26:273-8.
10人の被験者(小児アトピー性皮膚炎5人、健常小児5人)に対する、4種類の入浴/保湿方法を評価した。
■ アトピー性皮膚炎患者のスキンケアの標準的な推奨事項は、皮膚の水分補給と保湿剤の使用に対する重要性を強調している。
■ しかし、入浴や保湿の最適な臨床使用方法に関する推奨事項を導く客観的データはほとんどない。
■ この研究は、様々な組み合わせによる入浴および保湿療法後の皮膚水分状態を定量化した。
■ 10人の被験者(小児アトピー性皮膚炎5人、健常小児5人)に対する、4種類の入浴/保湿処方を評価した。
■ その4種類の方法は、保湿剤塗布のみ群、入浴後すぐ保湿塗布群、入浴後保湿を遅れて塗布群、入浴のみ(保湿塗布なし)群だった。
■ 全参加者に対し、各方法をクロスオーバーデザインを使用して評価した。
4種類のうち3種類の治療方法は、腕の入浴10分間後にタオルドライし、1) すぐ保湿剤を使用、2) 30分後に保湿剤を使用、3)保湿剤なしを実施した。 4番目の治療方法として、「入浴なし」の10分後に保湿塗布を実施した。各治療方法に対する観察は、入浴または非入浴の介入120分後だった。 入浴は、大きなボウルに腕全体を置き、肘窩の約5cm上に水道水を浸すことで行った。入浴製品は使用しなかった。市販の皮膚軟化剤(Cetaphilクリーム [登録商標])を、ニトリル手袋を付け、手から肘窩の5cm上まで塗布した。 これにより、4種類の治療法のうち3種類に関しては120分後の介入結果が得られた。 しかし、30分後に保湿剤を使用した群では、入浴後および30分後まで保湿が行われなかったことから、介入90分後のデータしかなかった。 したがって、完全なデータセットを図1に示すが、データ解析は、すべての介入方法のデータが含まれている介入90分間後のみ実施された。(管理人注;この枠内の情報は抄録でなく本文の記載です) |
■ 皮膚水分量は、標準的な静電容量測定値で評価した。
■ アトピー皮膚炎被験者において、保湿剤塗布のみ群(試験開始時と比較した90分後の皮膚水分量が206.2%)は、入浴後すぐ保湿塗布群(141.6%)、入浴後保湿を遅れて塗布群(141%)、入浴のみ(保湿塗布なし)群(91.4%)より有意に皮膚水分量が高かった(p < 0.05)。
■ 入浴と保湿剤の併用療法は、試験開始時と比較して90分後の皮膚水分量は高くなかった。
■ アトピー性皮膚炎被験者は、健常皮膚の被験者と比較して皮膚水分量に対する効果が低下していた。
■ 保湿剤を使わない入浴は皮膚水分量を悪化させる可能性がある。
■ 入浴後の保湿剤の使用は、保湿剤単独塗布するよりも少ないものの、適度な水分補充をもたらす。
結局、何がわかった?
✅入浴後、1) すぐ保湿剤塗布群、2) 30分後に保湿剤塗布群、3)保湿剤なし群、4)入浴せず保湿塗布のみ群で比較して、90分後の皮膚水分量は、保湿剤塗布のみ群(206.2%)>入浴後すぐ保湿塗布群(141.6%)=入浴30分後保湿塗布群(141%)>入浴のみ(保湿塗布なし)群(91.4%)の順だった。
安定している場合の入浴後の保湿は、急がなくてもよさそうだ。
■ 今回の検討からは、「すぐ保湿」ではなくとも、30分かけて保湿を使用してもよいと考えられますが、研究参加者が少ないこと、あくまで健常皮膚に対しての検討であることに注意が必要です。
洗浄するよりそのまま保湿を塗布したほうがいいか?
■ 今回の検討で、「保湿を塗るのみ」の方が良いのではないか?という点も気になるとことでしょう。
■ 例えば、入浴回数を増やす方がアトピー性皮膚炎を改善させるという報告もあります。
夏季中の入浴回数を増やすと、アトピー性皮膚炎症状が改善するかもしれない
■ このことは、アトピー性皮膚炎が悪化すると黄色ブドウ球菌が増加するためであり、黄色ブドウ球菌を保菌していると予想させる湿潤性湿疹に対しては抗生剤の効果は認められていません。
アトピー性皮膚炎における感染を示唆する湿潤性病変に抗生剤併用は有用か?
■ そして、黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎の発症・増悪に関与します。
重症アトピー性皮膚炎から検出された黄色ブドウ球菌ほど、アトピー性皮膚炎を悪化させる
■ アトピー性皮膚炎に対し、洗浄するかどうかは医師の診ている患者層によって異なり、重症度のステージに応じて対応を変える必要があることを予想させます。
アトピー性皮膚炎児の毎日の入浴を、専門医は推奨しプライマリケア医は推奨しない: ウェブベースの横断研究
■ 私は、結局、入浴に関しては治療ステージと患者さん毎に診察をして考えていくべきテーマだと考えています。
今日のまとめ!
✅洗浄のみで保湿を塗布しない場合は、皮膚水分量はむしろ低下するため、保湿を塗布したほうが良い。洗浄せず保湿を塗布したほうが皮膚水分量は多くなるが、アトピー性皮膚炎の症状のステージで洗浄するかどうかを指導したほうが良いと思われる。