軟水器は、アトピー性皮膚炎治療に有効か?

Thomas K, et al. A multicentre randomised controlled trial and economic evaluation of ion-exchange water softeners for the treatment of eczema in children: the Softened Water Eczema Trial (SWET). Health Technology Assessment 2011; 15.

水の硬度とアトピー性皮膚炎。

■ 硬水がアトピー性皮膚炎の発症・増悪リスクになるかもしれないという報告があります。

水の硬度はアトピー性皮膚炎の発症リスクに関連するかもしれない

水の硬度はアトピー性皮膚炎発症に影響するかもしれない

■ では、水の硬度を下げる軟水器が、アトピー性皮膚炎治療に有効でしょうか? 大規模介入ランダム化比較試験がありましたのでご紹介いたします。

■ なお、水の硬度は炭酸カルシウムに規定されており、塩素は無関係ですのでお間違えなく。そして、この研究はノッティンガム大学からの報告ですので、相当しっかりした研究計画のようです。

 

 

硬水が使用される地域に住んでいる中等症/重症アトピー性皮膚炎児366人に対し、軟水器あり群、なし群にランダム化したうえで12週間介入し、アトピー性皮膚炎の重症度を比較した。

目的

■ 家庭内にイオン交換軟水器を設置することで小児のアトピー性皮膚炎を改善することができるかどうかを決定し、もしそうならば、コストと費用対効果を確立する。

 

試験デザイン

観察者盲検並行群間ランダム化比較試験を12週間実施し、さらに4週間観察期間を設けた。

■ 湿疹は、試験開始時、4週後、12週後、16週後に、介入を盲検化された研究看護師によって評価された。

■ プライマリアウトカムは、受けた治療よりもランダム化した群によるintent-to-treatで分析された。

■ 二次解析としてのper-protocol解析では、割り当てられた治療を受けずプロトコル違反者とみなされた参加者は、除外された。

 

セッティング

■ 様々な民族や社会的集団に対応し都市部や郊外の家庭に住む児も含む、英国(UK)の二次・一次医療機関。

 

参加者

硬水(≧200 mg / l炭酸カルシウム)が供給される英国家庭に住んでいる、中等症/重症アトピー性皮膚炎児366人(生後6ヶ月~16歳)

 

論文から引用。英国における硬水が使用されている地域。

 

介入

■ 参加者は、イオン交換水軟水器+通常の湿疹ケア群(A群)× 12週間通常の湿疹ケア単独群(B群)×12週間にランダム化された。

論文から引用。使用された軟水器。

■ さらに4週間の観察期間が設けられ、その間に軟水器がA群から撤去され、B群に設置された。

論文から引用。試験デザイン。

■ 標準的な手順は、その家庭のすべての水を軟水化することだったが、飲み水や調理のために台所の蛇口では硬水が供給された。したがって、参加者は入浴や洗濯には軟水が使用されたが、硬水を飲み続けることとなった。

■ 通常ケア群は、湿疹をコントロールするために、現在実施していた治療法として定義された。

■ 試験期間中に使用された新たな治療方法は記録された。

 

プライマリアウトカムの指標

プライマリアウトカムは、Six Area, Six Sign Atopic Dermatitis(SASSAD)を用いて測定した試験開始時と比較した12週後のA群とB群の疾患重症度変化の平均差だった。

■ これは、割り当てられた介入を盲検化された観察者(研究看護師)によって記入された客観的重症度スケールである。

■ セカンダリアウトカムは、外用薬剤の使用、夜間動作、患者が報告した湿疹の重症度、さまざまな生活習慣尺度が含まれた。

■ フィラグリン(通常の皮膚バリア機能に重要であると考えられる皮膚タンパク質)をコードする遺伝子における少なくとも1種類の突然変異を有する参加者に基づき、事前に計画されたサブグループ解析を実施した。

 

結果

目標とした募集人数(336人)が達成された。

■ 分析された集団には、完全なデータを有する323人が含まれた。

12週目のプライマリアウトカム(SASSAD)の変化の平均は、軟水器群群(A群)は -5.0(標準偏差[SD]8.8)、通常ケア群(B群)は -5.7(SD 9.8)だった (平均差0.66、95%信頼区間 [CI] -1.37~2.69; p = 0.53)

論文から引用。プライマリアウトカムであるSASSADに有意差なし。

■ per-protocol解析は、主要な解析結果を支持し、フィラグリン遺伝子突然変異のある児とない児で治療効果が異なるというエビデンスはなかった。

盲検的に評価された3種類のセカンダリアウトカムも、2群間に有意差は見られなかった(薬物外用療法の使用; 夜間の動き; 適切/良好/優れた改善を示す割合)

■ 小さいが統計的に有意な、軟水器群に有利な差は、セカンダリアウトカムである参加者によって評価された指標(Patient-Oriented Eczema Measure (POEM); うまく症状コントロールされた週(well-controlled weeks;WCWs); Dermatitis Family Index(DFI)]だった。

■ 経済的評価と不確実性は、イオン交換軟水器がNHSの観点からアトピー性皮膚炎児に対する費用対効果の高い介入である可能性は低いことを示唆していた。

 

結論

■ 今回の試験を実施した集団において、軟水器は通常ケアに追加の利益をもたらさなかった

■ 両親が報告したような、小さいながら統計的な有意差がいくつかのセカンダリアウトカムで認められたが、この改善は反応バイアスの結果であった可能性が高い

■ 家庭に軟水器を設置することのより大きな利点が、軟水器の購入を正当化するのに十分であるかどうかは、個々の保護者がそれぞれのケースで考慮すべき事柄である。

■ この試験は、アトピー性皮膚炎治療のための非薬物的介入に対する強い要求を示しており、これは将来の研究を優先させる際に考慮すべき事柄である。

 

結局、何がわかった?

 ✅中等症以上のアトピー性皮膚炎に対し、軟水器使用あり群、なし群で12週間の治療を実施してもSASSAD(アトピー性皮膚炎の重症度の指標)の変化に、有意差は認めなかった(SASSADの変化; 軟水器あり群 平均-5.0± 8.8、なし群 平均-5.7±9.8; p = 0.53)

 

 

軟水器は、小児アトピー性皮膚炎治療に対する有効性を認めなかった。

■ 硬水とアトピー性皮膚炎に関連性があるとはいえ、今回の大規模介入ランダム化比較試験ではアトピー性皮膚炎の治療に有意な効果を認めなかったという結果でした。

■ 論文に述べられているように、軟水器は個々のアトピー性皮膚炎に考慮する場合はあるものの、少なくとも日常診療で推奨するものとは言えないといえるでしょう。

 

 

今日のまとめ!

 ✅軟水器は、小児アトピー性皮膚炎治療には有効性は低いようだ。

 

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