喘息発作初期に吸入ステロイド薬を増量すると、喘息増悪を防げるのか?
■ 喘息に対し日常診療で行われうるプラクティスとして、「喘息発作初期に吸入ステロイド薬を増量する」というものがあります(ガイドラインでは推奨されていませんが)。
■ そして先日、NEJMに喘息の研究結果が2本発表されました。1本は小児、1本は成人に対して、同じテーマで実施されました。
■ まずは小児に関してのご紹介です。
Jackson DJ, et al. Quintupling Inhaled Glucocorticoids to Prevent Childhood Asthma Exacerbations. The New England journal of medicine 2018; 378(10): 891-901.
フルタイド 176μg/日で治療を受けている軽症~中等症の喘息児に対し、発作初期に同量継続もしくは5倍に増量で対応し、重篤な喘息発作を防ぐかを検討した。
背景
■ 喘息の悪化は、吸入ステロイド薬といった喘息のコントローラー治療を定期的に使用してもしばしば起こる。
■ 臨床医は、通常、喘息コントロールが低下した初期症状に対し、吸入ステロイド薬の用量を増加させる。
■ しかし、小児に対するこの戦略の安全性や有効性に関するデータは限られている。
方法
■ 軽症から中等症の持続性喘息があり、前年に全身性ステロイド薬で治療された少なくとも1回の喘息増悪を経験している5歳~11歳まで小児254人を対象とした。
■ 低用量吸入ステロイド薬(プロピオン酸フルチカゾン 1吸入あたり44μg2吸入を1日2回)で48週間治療し、同用量を継続する(低用量群)か、喘息コントロールが「黄色ゾーン」になった初期症状の段階で高用量を7日間(高用量群;フルチカゾン1吸入あたり220μg2吸入を1日2回)にランダム化した。
■ 治療は二重盲検法で実施した。
■ プライマリアウトカムは、ステロイド全身投与で治療される重篤な喘息増悪率だった。
結果
■ ステロイド薬全身投与で治療した重篤な喘息増悪率は、高用量群で年0.48回、低用量群で年0.37回であり、relative rate 1.3 (95%信頼区間0.8~2.1; P = 0.30)だった。
■ イエローゾーン発症時期の、最初の増悪までの期間、治療失敗率、症状スコア、アルブテロール使用は、2群間で有意差は認めなかった。
■ ステロイドの総投与量は、高用量群では低用量群よりも16%多かった。
■ 高用量群と低用量群の成長差は-0.23cm /年だった(P = 0.06)。
結論
■ 吸入ステロイド薬の連日投与で治療されている軽症~中等症の持続性喘息児に対し、喘息コントロールが低下した初期症状に吸入ステロイド薬を5倍量を投与しても、重篤な喘息増悪率を低下させたり他の喘息転帰を改善せず、むしろ身長の伸びが鈍化する可能性が示唆された。
結局、何がわかった?
✅吸入ステロイド薬(ICS)の連日投与で治療されている軽症~中等症の持続性喘息児(5~11歳)に対し、喘息悪化初期にICSを5倍量にしても、重篤な喘息増悪率を低下させたり他の喘息転帰を改善せず、むしろ身長の伸びが鈍化する可能性が示唆された。
喘息発作初期に吸入ステロイド薬を増量するというプラクティスは重篤な喘息発作リスクを減らさず、むしろ副作用を増やすかもしれない。
■ 先に述べたように、喘息発作時に吸入ステロイド薬を増量させる方法は、ガイドラインでは推奨されていません。
■ ただし、今回の報告は海外からであり、フルタイド 176μg/日(本邦では200μg/日相当)となると、決して「少ない」とは言えないと思いますので、注意は要するでしょう。
■ では、成人ではどうでしょうか? その報告は、同じNEJMに発表されていますので、後日ご紹介いたします。
今日のまとめ!
✅小児気管支喘息で、発作初期に吸入ステロイド薬を5倍に増量しても、重篤な発作は防ぐことはできないようだ。