フィラグリン遺伝子変異は、アトピー性皮膚炎の治療結果に影響するか?

Chang J, et al. Association of Filaggrin Loss of Function and Thymic Stromal Lymphopoietin Variation With Treatment Use in Pediatric Atopic Dermatitis. Jama dermatology 2017; 153:275-81.

アトピー性皮膚炎の治療効果を、遺伝子のバリエーションから予測できるか?

■ フィラグリンは、角質層の主要構造蛋白質であり、皮膚バリア機能を決めるもののなかでも重要です。

■ TSLPは表皮細胞から産生されるサイトカインでアレルギー炎症のマスタースイッチです(Nature 2011)。

■ これらの遺伝子バリエーションにより、アトピー性皮膚炎治療効果が異なるかを検討した報告をご紹介いたします。

 

2〜17歳の小児842人に関し、フィラグリン・TSLP遺伝子のバリエーションと治療の違いを検討した。

重要性

■ アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis; AD)は小児期によくみられる疾患である。

 

目的

Filaggrin(FLG)およびThymic Stromal Lymphopoietin(TSLP)遺伝子型のバリエーションが、経時的な治療の違いにの差異に関連するかどうかを決定する。

 

試験デザイン、セッティング、参加者

■ この前向きコホート試験は、10年間のDNA抽出を目的とした唾液サンプルを採取したPediatric Eczema Elective Registryに登録された小児ボランティア842人からリクルートされ、フォローされた。

■ 試験適格基準は、2〜17歳の小児、アトピー性皮膚炎の診断(癌がない)、事前のピメクロリムスの使用がだった。

■ 参加者は、平均7.6年間(約6396人・年)フォローされた。

■ 10年間のフォローアップ期間中に、138人(16.4%)にデータの欠落を認めなかった。

 

曝露

■ FLGおよびTSLP遺伝子型の評価。

 

主な結果と計測

過去6ヶ月以内のステロイド外用・カルシニューリン阻害剤外用、他の薬剤の使用をアトピー性皮膚炎治療に必要としたかどうかを、6ヶ月の毎の間隔による自己報告により得られた結果。

 

結果

■ 全体として、842人(平均1.9年±2.7歳、女児438人)がこの研究に含まれた

■ FLG機能喪失遺伝子(loss of function; LOF)が0、1、2箇所ある患者、TSLPrs1898671の一塩基多型を持つ患者は、Wild type・ヘテロ接合型・ホモ接合型で、使用された治療を比較した。

2箇所のFLG LOF遺伝子を有する患者は、皮膚症状がより軽快せず(オッズ比 [OR]、0.20; 95%CI 0.07-0.55)、ステロイド外用を使用する可能性が高かった(OR 5.04; 95%CI 1.91-13.31)

TSLP rs 1898671ホモ接合体を持つ患者は、カルシニューリン阻害剤外用を使用する可能性がより低く(OR 0.16; 95%CI、0.06-0.42)、カルシニューリン阻害剤外用を中止した患者のうち、TSLP rs 1898671一塩基多型を有する患者は、 他の治療をより中止できそうだった(OR 0.45; 95%CI、0.26-0.76)

論文より引用。遺伝子バリエーションと治療効果。

■ 比較した1つの例を除き、Wild typeやヘテロ接合性の患者との間に有意差は認められなかった。

 

結論と妥当性

治療薬の使用や、有効である可能性のある治療は、遺伝的変異と関連していた。

■ そのバリエーションは、2箇所のFLG LOF遺伝子や、TSLPrs1898671ホモ接合体を有する小児に限定され、野生型およびヘテロ接合性の患者間には、結果の多くにおいては有意な差異が観察されなかった。

■ したがって、この検討の分析における主な違いの要因は、これら変異の絶対的な存在や不在ではなく、FLG LOF遺伝子の数またはTSLP SNPであると考えられた。

■ これは将来の研究にとって重要な考慮事項になるかもしれない。

 

結局、何がわかった?

 ✅2箇所のFLG遺伝子異常があると、皮膚症状がより軽快せず(オッズ比  0.20)、ステロイド外用を使用する可能性が高かった(OR 5.04)。

 ✅TSLP rs 1898671ホモ接合体があると、カルシニューリン阻害剤外用を使用する可能性がより低く(OR 0.16)、TSLP rs 1898671一塩基多型を有する患者は、 他の治療を中止できる可能性が高かった(OR 0.45)。

 

 

遺伝子のバリエーションで、アトピー性皮膚炎治療の反応性が変わるかもしれない。

■ これらの遺伝子バリエーションは、簡単に調べることはできませんので、直接臨床には有用とは言えませんが、今後こういったPrecision Medicine(精密医療)のひとつとして注目されるのかもしれません。喘息では、その方向性が見え始めています。

■ なお、フィラグリン遺伝子異常に関しては、手のしわ(palmar hyperlinearity)で予想できるかもしれない、、という報告もあり、以前ご紹介いたしました。

 

 

今日のまとめ!

 ✅遺伝的バリエーションにより、治療薬や、有効であるかもしれない治療を予測できるようになるかもしれない。

 

スポンサーリンク