Kojima R, et al. Salivary cortisol response to stress in young children with atopic dermatitis. Pediatr Dermatol 2013; 30:17-22.
ステロイド外用薬と副腎抑制。
じゃあ具体的に行こうか。たとえば、「ステロイド軟膏を使うと副腎が働かなくなる」といわれたらどうする?
でも、外用薬でも最強ランクのステロイドを塗り続けてクッシング症状が出現したという報告もあるし、海外で7ランクに分類されているステロイド外用薬のうち1~2ランクのステロイド外用薬を使い続けると6%ぐらい副腎抑制があるかもというメタアナリシスもあるんだ。
もちろん、基本可逆性(もとに戻りうる)だから、ステロイド外用薬を減量することを考えながら丁寧に治療することになるよね。
ただ、この話をすると、かえって心配になって使えないという方によくお話する報告があるんだ。
それは、「ステロイド外用薬の使用の有無にかかわらず、アトピー性皮膚炎が重症であるほど、副腎機能が落ちている」というびっくりするような結果がでている。今回は、その報告を紹介しよう。
乳幼児アトピー性皮膚炎38人に関し、静脈穿刺(採血時)の副腎反応性を、アトピー性皮膚炎の軽症、中等症、重症群で比較した。
背景
■ ストレス下における視床下部 - 下垂体 - 副腎(hypothalamic-pituitary-adrena;HPA)の低反応性は、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis ; AD)症状のストレスに誘発された増悪に対する説明のひとつであるかもしれない。
■ 先行研究では、AD児や成人は、心理社会的ストレスに対する唾液コルチゾールの反応性を低下させ、HPAの低反応性を示唆しているが、ステロイド外用薬(topical corticosteroid ;TCS)による治療における全身的副作用を受けやすい小児ではほとんど研究されてこなかった。
■ 我々は、ADの児に対する静脈穿刺のストレスに対する唾液コルチゾールの反応性が、ADの重症度やTCSによる治療のパフォーマンスに関連するかどうかを評価した。
方法
■ 外来患者で治療されている38人の乳幼児(年齢中央値16.5ヶ月、範囲3〜66ヶ月)を検討した。
■ 患者は、SCORAD(scoring of atopic dermatitis index)に従い、3群に分けられた(軽症 12人、中等症 14人、重症 12人)。
■ ストレスに対するHPAの反応性を評価するために、唾液中コルチゾールを静脈穿刺の前後で測定した。
結果
■ ストレスに対する唾液コルチゾールの反応性は、アトピー性皮膚炎の重症度と負の相関があった(p = 0.048)が、それまでのステロイド外用薬(TCS)使用には相関しなかった(p = 0.43)。
結論
■ この知見は、ステロイド外用薬(TCS)の使用ではなくアトピー性皮膚炎(AD)の疾患活動性(重症度)が、小児ADにおける副腎(HPA)機能不全の原因であることを示唆している。
結局、何がわかった?
✅アトピー性皮膚炎の乳幼児に対するストレスに対する唾液コルチゾールの反応性は、アトピー性皮膚炎の重症度が高いほど低かった(p = 0.048)が、それまでのステロイド外用薬使用には相関しなかった(p = 0.43)。
副腎抑制という副作用を恐れるあまりステロイド外用薬を使用せず重症化した場合、副腎抑制が起こりうるという結果。
■ 私は、だからといって”ステロイド外用を使え”というつもりはありません。ステロイド外用薬は必ず、減量と中止を目指してスキンケア指導や環境要因も考えながら勧めていくべきだと考えています。
■ 実際、高ランクのステロイド外用薬の連用は、副腎抑制を低率ながら起こし得ます(可逆性です)。
■ ただ、ステロイド外用を恐れるあまりに使用をさけてアトピー性皮膚炎が悪化した場合、かえってステロイドを大量に使った場合と副作用と同じ合併症をきたすというのは、また問題があるだろうと思います。
今日のまとめ!
✅乳幼児アトピー性皮膚炎に関し、重症度が高いほど副腎機能は抑制される。