※スピオルト®レスピマット(チオトロピウム臭化物水和物/オロダテロール塩酸塩製剤合剤)の画像は、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社のページから引用しました。
Sobieraj DM, et al. Association of Inhaled Corticosteroids and Long-Acting Muscarinic Antagonists With Asthma Control in Patients With Uncontrolled, Persistent Asthma: A Systematic Review and Meta-analysis. Jama 2018; 319:1473-84.
喘息に対する長時間作用型抗コリン薬(LAMA)の追加効果のメタアナリシス。
どちらかといえばCOPDに対して使う薬というイメージだ。COPDは気管支や肺胞がダメージをうけているから、神経伝達物質の一種であるアセチルコリンを阻害して気管支を広げるというのがメカニズムになるね。アセチルコリンを阻害するから、抗コリン薬というわけだ。
日本ではスピリーバのみが保険適応になっているけど、小児には保険適応がないのが現状だ。
今後、使えるようになってくるかもしれないね。
今回は、昨日のSMART療法にひきつづき、LAMAのメタアナリシスを紹介しよう。
これは小児に関しては12歳以上のデータだよ。
持続性喘息患者における、ICS(吸入ステロイド)やLABA(長時間作用性β刺激薬)に対する追加療法としてのLAMA(長時間作用性抗コリン薬)の上乗せ効果を検討したランダム化試験15件に対するメタアナリシスを実施した。
重要性
■ 長期作用性抗コリン薬(Long-acting muscarinic antagonists; LAMA)は、持続性喘息の管理における吸入ステロイド薬に対する考えうる補助療法である。
目的
■ 吸入ステロイドに対するアドオン療法としてのLAMA vs プラセボまたは、LAMA vs 他のコントローラーと関連する治療効果におけるシステマティックレビューとメタアナリシスを実施する。
■ ならびに、コントロール不良で持続性の喘息患者において、吸入ステロイドおよび長時間作用性β-アゴニスト( long-acting β-agonists ; LABA)に対する追加療法としてのLAMAの上乗せ(以下、トリプル療法と称する)vs 吸入ステロイドとLABA併用を比較したシステマティックレビューとメタアナリシスを実施する。
データソース
■ MEDLINE、EMBASE、Cochraneデータベース、臨床試験登録レジストリ(直近は2017年11月28日まで)。
研究の選択
■ 2人のレビュワーは、コントロール不良で持続性の喘息患者において、吸入ステロイド薬、吸入ステロイド+LABA併用に対するアドオン治療として、LAMAもしくはプラセボ、または他のコントローラーを評価したランダム化試験または観察研究を選択した。
データ抽出および合成
■ リスク比( risk ratio; RR)、リスク差(risk difference; RD)、平均差(mean difference; MD)と対応した95%CIを計算するために、ランダム効果モデルを用いたメタアナリシスを実施した。
■ 引用スクリーニング、データ抽象化、リスクアセスメント、エビデンス評価は、2名の独立したレビュワーによって完了された。
主なアウトカムと測定
■ 喘息の増悪。
結果
■ 同定された1326報告のうち、ランダム化試験15件(7122人)が含まれた。
■ 多くの試験では、吸入ステロイドに対する、LAMA vs プラセボ追加の比較、もしくはLAMA vs LABAの追加が評価された。
■ 吸入ステロイド薬にLAMA vs プラセボを追加すると、全身性ステロイド薬を必要とする喘息増悪リスクを有意に低下させた(RR 0.67 [95%CI 0.48-0.92]; RD -0.02 [95%CI -0.04-0.00])。
■ 吸入ステロイド薬に対するLABA追加は、LAMA追加と比較して喘息増悪リスクに有意差を認めなかった(RR 0.87 [95%CI 0.53-1.42]; RD 0.00 [95%CI -0.02-0.02] )。
■ トリプル療法は、吸入ステロイド薬+LABA併用と比較して、増悪を有意に改善しなかった(RR 0.84 [95%CI 0.57-1.22]; RD -0.01 [95%CI -0.08-0.07])。
結論と妥当性
■ このシステマティックレビューおよびメタアナリシスは、吸入ステロイドに対するアドオン療法として、プラセボと比較したLAMA使用は、喘息増悪のリスクを低下させることを示した。
■ しかし、LAMAのベネフィットは、LABAより大きくない可能性がある。
■ また、トリプル療法は増悪リスクを低下させなかった。
結局、何がわかった?
コントロール不良で持続性の喘息患者において、
✅吸入ステロイド薬(ICS)に長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を追加すると、プラセボに比較して全身性ステロイド薬を必要とする喘息増悪リスクを有意に低下させた(RR 0.67 [95%CI 0.48-0.92]; RD -0.02 [95%CI -0.04-0.00])。
✅長時間作用性β刺激薬(LABA)追加とLAMA追加を比較し、喘息の増悪リスクには有意差を認めなかった(RR 0.87 [95%CI 0.53-1.42]; RD 0.00 [95%CI -0.02-0.02] )。
✅ICS+LABAにLAMAを追加するトリプル療法は、吸入ステロイド薬+LABA併用と比較して、増悪を有意に改善しなかった(RR 0.84 [95%CI 0.57-1.22]; RD -0.01 [95%CI -0.08-0.07])。
持続性喘息に対するLAMA(長時間作用型抗コリン薬)の追加治療は有用。しかし、ICS+LABAに追加したLAMAは有効性は低いようだ。
■ LAMAに関する小児に関するランダム化比較試験はすでにご紹介し、他の薬剤を使用している重症喘息児に、抗コリン薬であるスピリーバを1日5μg追加吸入すると呼吸機能が改善したと報告されていました。
■ 当面、本邦でLAMAを使えるようにはならなさそうですが、オプションとして知っておいたほうが良いと考えます。
今日のまとめ!
✅ICSにLAMAを追加するとプラセボ追加より喘息増悪リスクが0.67倍になるが、LABA追加とLAMA追加に有意差はなし。
✅ICSとLABA併用に、LAMAを追加しても増悪は有意に改善しないようだ。