環境中のピーナッツアレルゲンにどれくらい配慮する必要性があるか?

Greenhawt M. Environmental exposure to peanut and the risk of an allergic reaction. Ann Allergy Asthma Immunol 2018; 120:476-81.e3.

食物アレルギーは、微量でも症状が出現する可能性はある。

うさみん
ねえ、ほむほむ。
食物アレルギーのあるお子さんが、集団保育にいくと、やっぱりリスクはあるよね?

ほむほむ
そうだね。
でも、食育の観点からも、できるだけ食事に配慮はして頂きたいし、一方で、医療者側も、できるだけ食べられるような「必要最小限の除去食」をすすめていくことでサポートできればいいなあと思っているよ。

うさみん
そうですね。
サポートできるように努めたいです。
そういえば、以前、環境中にも食物アレルゲンが含まれていることをおしえてもらったけど、そのアレルゲンはリスクにはならないの?

ほむほむ
なかなか難しい質問だね。
こればかりは、その子の重症度と環境に応じるとしかいえないよね。
でも、できるだけの治療をすることで、少しずつ食べられる量がふえると、そのリスクがさがるという報告も最近出てきているね。
微量でも摂取できるようになれば、環境中のアレルゲンで大きな症状はでなくなるしね。
そのテーマでの報告が最近みかけたから、紹介しよう。

 

 

 

ピーナッツアレルギー患者が、環境中のピーナッツへリスクがあるかどうかを文献的なレビューを行い、検討した。

目的

■ ピーナッツアレルギーのある患者へのピーナッツへの環境曝露のリスクに関するエビデンスを検討する。

 

データソースと研究の選択

■ ナラティブレビューにより、ピーナッツの環境中の分布・環境中のピーナッツの低減・ピーナッツの制限に関わる公的政策を含む関連記事をPubMedで検索した。

 

結果

■ 4研究からのデータによると、ピーナッツバターの飛散や皮膚についたピーナッツバターは全身反応を引き起こさず、ピーナッツは適切な洗浄剤を使用すると手や表面から少なくすることができ、そして殻で覆われたピーナッツ粉塵は浮遊しない。

■ 最近の研究では、ピーナッツタンパク質1.5mgが摂取できれば、負荷試験を実施した研究による客観的な症状に基づくとピーナッツアレルギー群の約95%で一般に許容されることが確認された。

学校や民間航空機などの環境でピーナッツやピーナッツを含む製品の禁止(または特定のエリアでの制限)に焦点を当てた拘束的な政策は、そのような対策が機能するというエビデンスに裏付けられていない

■ そしてそれは必然的に、医学的エビデンスが不足と患者を楽にする基準を提供したいという願望との不快な不一致を起こしうる。

 

結論

環境中のピーナッツへの非経口曝露、日常的な接触、接近、吸入から生じるリスクは極めて少ない

■ 患者の5%がおよそピーナッツタンパク質1.5mgという閾値に耐えることができれば、特別な回避や制限の必要性に関する行動や状況による意思決定から自由になるのに役立つかもしれない。

■ ピーナッツがどのようにしてアレルギー反応を引き起こすかのメカニズムについての神話を払拭するためには、引き続き研究が必要である。

 

結局、何がわかった?

 ✅ 環境中のピーナッツへの非経口曝露、日常的な接触、接近、吸入から生じるリスクは極めて少ないが、微量の(ピーナッツ蛋白1.5mg)でも症状がある場合(5%)は許容できないかもしれない。

 

 

食物アレルギーがあっても、多くの場合は環境中のアレルゲンで即時型反応は起こさないようだ。

■ ピーナッツ蛋白質1.5mgといえば、ピーナッツそのもので考えれば6mg程度となり、イメージでいえば1/100個以下でしょう。

■ もちろん、このデータは「全員が安全」ということを示していません。

■ 食物アレルギーはとても「振れ幅」が大きい疾患であり、極めて微量でも症状が出うる場合はあります。すなわち、ピーナッツ1/100個でも症状がでうる重篤な方もいらっしゃいます。

■ 自分の患者さんで言えば、例えば高度加水分解乳(高度に低アレルゲン化したミルク)を微量でも摂取できないお子さんは、「原因がよくわからない反応」をよく起こすように思います。

■ その反応が、環境中にあるアレルゲンによるものかどうかはわかりませんが、確かに環境中にアレルゲンが拡散することは証明されています。

■ しかし、そのようなお子さんでも治療がすこしずつ進んでくると、徐々にエピソードが減ってくるようです。それが、この報告で言う95%にはいってきたことを指すのかもしれません。

 

 

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今日のまとめ!

 ✅食物アレルギーがあっても、口からではない曝露、日常的な接触、近くにいること、吸入から生じるリスクは、一般的には極めて少ない。

 

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