ネモリズマブ(抗-IL-31受容体抗体)の長期使用による効果と安全性は?

アトピー性皮膚炎に対する有効性が期待されている生物学的製剤のひとつであるネモリズマブ。長期投与試験の結果が発表されました。

IL-31は、「痒み」に関連するサイトカインとしてよく知られています。

■ そして、IL-31を抑える生物学的製剤であるネモリズマブは、すでにアトピー性皮膚炎に有効性が確認されています。

■ そのネモリズマブの長期投与試験の結果が、JACIに報告されましたのでご紹介します。

 

 

Kabashima K, et al. Nemolizumab in patients with moderate-to-severe atopic dermatitis: Randomized, phase II, long-term extension study. The Journal of allergy and clinical immunology 2018. [Epub ahead of print]

ネモリズマブ(抗-IL-31受容体抗体)による治療のランダム化比較試験に参加したアトピー性皮膚炎患者の、64週間の治療経過と安全性を確認した。

背景

■ ネモリズマブ(Nemolizumab; 抗-IL-31受容体抗体; mAb)は、第II相、12週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験(パートA;NCT01986933)により、外用治療によってコントロール不良の中等症~重症のアトピー性皮膚炎である成人のそう痒や湿疹、睡眠を改善した。

 

目的

■ さらに、52週間の二重盲検を延長した(パートB)において、4週間ごと(Q4W)または8週間ごと(Q8W)に皮下注射したネモリズマブに対する長期有効性や安全性を評価した。

 

方法

■ パートBでは、それまでのネモリズマブ用量(0.1,0.5または2.0mg / kg Q4Wまたは2.0mg / kg Q8W)を継続した。

■ パートBのエンドポイントには、痒みに対するビジュアルアナログスケールおよび皮膚炎スコア(Eczema Area and Severity Index [EASI] を含む)による試験開始時から改善率が含まれた。

論文から引用。計画のフローチャート。

 

結果

■ 全体として、264人中216人がパートAを完了し、191人がパートBに組いられ、 131人がパートBを完了した。

■ パートAでネモリズマブにランダム化された153人において、試験開始時からの痒みのビジュアルアナログスケールスコアの改善は、12週から64週にかけて維持もしくは増加し、0.5mg / kg Q4W群がもっとも改善が良かった(開始時から第64週までの改善率は0.1、0.5、0.2mg / kg・Q4Wおよび2.0mg / kg・Q8W群でそれぞれ-73.0、-89.6、-74.7、-79.1)

論文から引用。かゆみスコアの経過。

試験開始時からの皮膚炎スコアの改善も、64週まで維持もしくは増加した(EASIスコアの変化率; 0.1、0.5、2.0mg / kg・Q4W群 および2.0-mg / kg ・Q8W群でそれぞれ-68.5、-75.8、-78.9、-69.3)

■ 64週間にわたり、83%〜89%の患者に1種類以上の有害事象があったが、新たな安全性の懸念は確認されなかった。

 

結論

■ ネモリズマブの64週までの投与は効果的であり、外用治療によりコントロール不良の中等症〜重症のアトピー性皮膚炎に対し忍容性は良好だった。

 

 

結局、何がわかった?

 ✅ネモリズマブによる中等症以上のアトピー性皮膚炎治療において、試験開始時からの痒みのビジュアルアナログスケールスコアの改善は、12週から64週にかけて維持もしくは増加し、0.5mg / kg Q4W群がもっとも改善が良かった(開始時から第64週までの改善率; 0.1、0.5、0.2mg / kg・Q4Wおよび2.0mg / kg・Q8W群でそれぞれ-73.0、-89.6、-74.7、-79.1)。

 ✅ 試験開始時からの皮膚炎スコアの改善も、64週まで維持もしくは増加した(EASIスコアの変化率; 0.1、0.5、2.0mg / kg・Q4W群 および2.0-mg / kg ・Q8W群でそれぞれ-68.5、-75.8、-78.9、-69.3)。

 

 

今後ネモリズマブも、デュピルマブ(デュピクセント)に続く生物学的製剤の一つになるかもしれない。

■ まだ小児には適応がないため私はアトピー性皮膚炎には使用経験はありませんが、生物学的製剤は今後、徐々に使う場面が出てくるかもしれません。

■ 生物学的製剤は、よほど対象を選ばなければコスト的な面も含め問題があると思われますが、検証が進んでいくでしょう。

■ ややドロップアウト率が高い点は気になりますが、今後ネモリズマブもアトピー性皮膚炎治療に使う時代が来る可能性がありますね。

 

 

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今日のまとめ!

 ✅ネモリズマブは、中等症以上のアトピー性皮膚炎の痒みや皮膚症状の改善に有用で、64週間の安全性が確認された。

 

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