
顔(特に目の周囲)へのステロイド外用薬が、眼圧をあげるかどうかを心配される医師は多いです。
■ ステロイド外用薬は、一般に眼の周囲は避けることが多く、プロトピック外用薬を使うことが多いです。
■ ステロイド外用薬が潜在的に眼圧をあげるリスクがあるからですが、実際にどれくらいのリスクがあるのでしょう?
※ 2019/4/13 追記。
この記事に関し注意喚起いたします。
「”頻度が少ないからといって”ステロイド外用薬を眼の周囲に塗ることを推奨しているものではありません」し、一方で「ステロイド外用薬を恐れるあまり使用を避けて白内障や網膜剥離のリスクをあげる」ことも望みません。
この記事を記載している段階では、眼の周囲へのステロイド外用薬を塗布が眼圧にどれくらい影響するかを検討した報告は少なく、症例集積研究にとどまります。
その中でのご紹介の記事とお考えください。
あくまで、眼周囲のステロイド外用薬は短期間にとどめ、タクロリムス軟膏などに変更を推奨します。
眼科医で緑内障が専門のSatoshi Y先生に専門家からの視点のコメントを頂いていますので、ご覧下さい。
眼圧測定の間隔(使用後どれくらいの眼圧か)も記載がないですし、眼圧の測定方法も記載されていません。65例のうち5例はすでに緑内障の診断がついていてうち3例はステロイド緑内障です。眼圧が上がった例はなかったわけではなく、点眼も併用していたので外用薬のみの影響とは考えないとのことのようで
— Satoshi Y (@megane0_0) April 11, 2019
Tamagawa-Mineoka R, et al. Influence of topical steroids on intraocular pressure in patients with atopic dermatitis. Allergology international : official journal of the Japanese Society of Allergology 2018; 67(3): 388-91.
顔面に対するステロイド外用薬を使用し、眼圧を2回以上測定したアトピー性皮膚炎患者65人のデータを検討した。
背景
■ ステロイド外用薬(Topical corticosteroids; TCS)は、皮膚萎縮などの有害な作用を誘発し得る。
■ TCSは眼圧(Intraocular pressure; IOP)の上昇を引き起こすことがあるが、TCSの連日使用がIOPに与える影響は十分に解明されていない。
■ そこで、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の日常治療におけるTCSの臨床用量とIOPの変化を評価した。
方法
■ 我々は、ADと診断され、2回以上のIOP測定を病院で受けた計65人の患者の臨床データを収集した。
結果
■ 2〜12歳の患者の90%、13歳以上の患者の90%に対し、顔面に対するステロイド外用薬をそれぞれ月平均≦11.8g、≦15.0gを使用した。
■ 治療中、いずれの患者においてもTCSに関連したIOCの増加はなかった。
結論
■ 我々の研究は、上記の用量では、TCSがIOPを増やさないだろうということを示している。
■ しかしステロイドレスポンダーでは、IOPはステロイドに対して高い反応性があることが知られている。
■ したがって、眼瞼にステロイド外用薬を塗布した患者は、眼科で定期的に眼科測定を受ける方がよい。
結局、何がわかった?
✅眼圧を2回以上測定したアトピー性皮膚炎患者(顔に使用したステロイド外用薬が月平均11.8g以下[2-12歳]、15g以下[13歳以上])で、眼圧が上がった例はなかった。
この報告では、顔へのステロイド外用薬が眼圧をあげる例はなかったが、注意は要するとされています。
■ 眼圧の上昇は、「ステロイドレスポンダー」に多いとされています。ですので、やはり眼の周囲にステロイド外用薬を長期使用する場合は注意を要します。
■ ただ、一般的な使い方をして、ある程度改善してからプロトピック外用薬に変更するなどすれば、眼圧をあげる心配はそれほどにはなさそうです。
■ むしろ、顔の湿疹を長期化させる、もしくは重篤化させることで、その後の白内障のリスクは増加することが報告されています。
■ 眼の周囲に関してはステロイド外用薬は比較的よく効きますので、塗り方の説明をしつつ早期にプロトピックに変更するという方針で良いように考えています。
今日のまとめ!
✅顔にステロイド外用薬を使用した65人の眼圧は、この報告では上がる例はなかったが、注意は必要である。