様々な食品が、アレルギー疾患の予防に有効かもしれないという報告がありますが、今回はチーズ。
■ コホート研究とは、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を追跡し、疾病の発生率を比較するという観察研究ではエビデンスレベルが高い方法です。
■ いくつかのコホート研究でアレルギー疾患を予防する「かも」という結果が報告されています。
■ 今回はチーズに対する検討。
Nicklaus S, et al. The protective effect of cheese consumption at 18 months on allergic diseases in the first 6 years. Allergy 2018.[Epub ahead of print]
欧州6か国における出生コホート試験(PASTURE試験)に参加した児931人に関し、生後18か月に摂取しているチーズの種類の数と、6歳時点でのアレルギー疾患の発症の関連を検討した。
背景
■ アレルギー疾患に対する微生物に対する曝露の影響はよく研究されている。
■ アレルギー疾患に対する早期に食物が多様になることによる予防効果は、PASTUREコホート研究で過去示されている。
■ チーズ(潜在的に微生物の多様性が豊富)の摂取は、さらに検討する必要がある。
■ そこで、チーズの摂取量がアレルギー疾患に関連しているかどうかを評価することを目的とした。
方法
■ PASTURE試験(ヨーロッパ5カ国における出生コホート試験)では、出生から6歳までの 931人に対するアンケートにより、食事習慣、環境要因、アレルギー疾患に関するデータを収集した。
■ 生後18ヶ月でのチーズ摂取は、摂取頻度と多様性(すなわち、ハードプレス、セミプレス、ソフト、ブルー、フレッシュチーズ、農場産の6種類)により定量化した。
■ 6歳時点でのアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)、食物アレルギー(food allergy; FA)、アレルギー性鼻炎、喘息、アレルゲン感作に対するチーズ摂取の効果を、交絡因子の調整したうえで多変量ロジスティック回帰を実施した。
結果
■ チーズ摂取は、非摂取と比較して、6歳時点でのAD(OR 0.51 [0.29-0.90]; p = 0.02)やFA(OR 0.32、[0.15-0.71]; p = 0.004)を有意に予防したが、アレルゲン感作、アレルギー性鼻炎、喘息への影響はなかった。
■ ADやFAに対するこの効果は、摂取しているチーズの多様性と関連しているようだった(それぞれのOR 0.64 [0.48-0.85] /チーズの種類; p = 0.002; OR 0.55 [0.33-0.92]; p = 0.02/チーズの種類)。
結論
■ 逆の因果関係を完全に排除することはできないが、他の食品の多様性の保護効果に加えて、生後18ヶ月時点での摂取しているチーズの多様性は、6歳時点でのADやFAの予防効果があった。
結局、何がわかった?
✅生後18か月にチーズ摂取していると、摂取していない群と比較して、6歳時点でのアトピー性皮膚炎(OR 0.51 [0.29-0.90]; p = 0.02)や食物アレルギー(OR 0.32 [0.15-0.71]; p = 0.004)の発症を有意に予防した。
✅さらに、摂取しているチーズの種類がおおいと、予防の可能性があがるようだった(アトピー性皮膚炎 OR 0.64 [0.48-0.85] /チーズの種類; p = 0.002)( 食物アレルギー OR 0.55 [0.33-0.92]; p = 0.02/チーズの種類)。
こういうコホート試験による検討は、実際に介入試験をおこなうと必ずしも再現性はありませんが、「食物の多様性」は重要かもしれません。
■ バリエーションを増やすと食物アレルギーの発症を抑制するという報告があります。
■ さらに、プロバイオティクスや納豆、ヨーグルトの摂取がアレルギー疾患を予防すると考えると、微生物の関連もあるかもしれません。
■ とはいえ、コホート試験のよる検討は、介入試験で覆されることもあり、多少眉唾で見たほうがいいのかなあと最近は思っています。
■ また、チーズは乳アレルギーのお子さんではアレルゲン性が高く、十分な配慮が必要です。
今日のまとめ!
✅チーズはアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの予防に有効かもしれない。