アトピー性皮膚炎におけるステロイド嫌い(忌避)は治療の障壁となる

ステロイド外用薬に対する忌避は、治療失敗に繋がる可能性が高くなります。

■ ステロイド嫌い(忌避)は一般的な状況です。先日ご紹介した報告でも、イタリアでも8割を超えるという結果でした。

■ そこでも書きましたが、この理由のひとつは医療者側にもあると私は考えています。

■ しかし、皮膚の炎症は、それ自体が皮膚のバリア機能を下げます。

■ そして一方で、ステロイド外用薬の連日使用は、それ自体が皮膚バリア機能を下げる可能性が高くなります。

■ すなわち、ステロイド外用薬を「連用する場合は」丁寧な説明が必要です。そして、減量できるまで定期的に受診をお願いする必要があるでしょう。

■ すこし脱線しましたが、全体として、ステロイド忌避はどれくらいなのでしょう?そのテーマのシステマティックレビューをご紹介します。

 

Li AW, Yin ES, Antaya RJ. Topical Corticosteroid Phobia in Atopic Dermatitis: A Systematic Review. JAMA Dermatol 2017; 153:1036-42.

ステロイド嫌い(忌避)に関する16報告に関し、その定義、率などを評価した。

重要性

ステロイド外用薬(Topical corticosteroid; TCS)忌避は、患者と患者の保護者が経験する、TCSに関連した否定的な感情や信念を指す。

■ この現象は、アトピー性皮膚炎の患者における治療失敗の主な寄与因子であり得るが、文献であまり報告されていない。

 

目的

■ アトピー性皮膚炎におけるTCS忌避の治療法の遵守に関する定義、率、由来、効果を体系的に評価する。

 

エビデンスレビュー

■ Ovid(MEDLINE、EMBASE)、PubMed、Web of Scienceを含む電子データベース全体を、特定の適格性基準を用いて、1946年1月1日から2016年10月31日までの論文の文献検索を行った。

■ 含まれた論文は、アトピー性皮膚炎患者またはその保護者のTCS忌避を評価していた。

■ 研究の質に対する評価は、それぞれの研究に対するOxford Center for Evidence-Based Medicine品質評価スキーム(修正版)に基づいた。

 

結果

■ 文献検索によって特定された論文490報告のうち、16報告が適格基準を満たしていた

全て横断研究だった。

ステロイド外用薬忌避の有症率は21.0%(95%CI 15.8%~26.2%)から83.7%(95%CI 81.9%~85.5%)の範囲だった。

■ 忌避がどのように定義されたかには、(ステロイド外用薬に対する)懸念から不合理な恐れまで、大きなバリエーションがあった。

■ TCS忌避の評価に使用されたアンケートには、1〜69の質問が含まれていた。

忌避群と非忌避群のアドヒアランス不良を比較した2研究では、それら2つの研究の忌避群ともに、アドヒアランス不良率が有意に高率だった(49.4% vs 14.1%および29.3% vs 9.8%)

■ 患者がステロイドに関する情報を入手した情報源は、医師、友人、親戚、放送媒体、印刷媒体、インターネットが含まれた

 

結論と関係

■ ステロイド外用薬(TCS)忌避の特徴は、一般に、文化を越えた患者から報告されており、アドヒアランス不良がより高いことと関連している可能性がある。

■ TCS忌避のある患者と患者がステロイドに関する情報を入手している情報源は、治療計画のアドヒアランスを高めるための介入のターゲットとなるかもしれない。

■ しかし、研究で使用されるTCS忌避の定義や評価方法は、データの定量的な比較や推定を排除するための標準化が不十分である。

■ この現象をよりよく特徴づけ、潜在的な介入の有効性を評価するためには、標準化された定義と評価方法を用いたさらなる研究が必要である。

 

結局、何がわかった?

 ✅ ステロイド外用薬忌避は、研究により21.0%(95%CI 15.8%~26.2%)から83.7%(95%CI 81.9%~85.5%)の範囲だった。

 ✅ 忌避群と非忌避群のアドヒアランス不良を比較した2研究では、忌避群でのアドヒアランス不良率が有意に高率だった(49.4% vs 14.1%および29.3% vs 9.8%)

 

 

ステロイド忌避(嫌い)の問題は、患者さんだけの問題ではなく、医療者側・医療システムそれぞれの問題に起因すると思っています。

■ 情報源にのべられているように、医療者がステロイド忌避の情報源になる可能性があります。

■ ステロイド外用薬は、とても一般的な薬ではあるものの、その連用の際のつかいこなしには思った以上に多くの勉強が必要ですし、診療には時間を要します。

■ 現状の医療情勢のなかで、その時間を確保するのは簡単ではありません。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ステロイド忌避(嫌い)は、研究によるばらつきはあるものの2割~8割と高率であり、忌避群と非忌避群のアドヒアランス不良を比較した2研究では、忌避群でのアドヒアランス不良率が有意に高率だった(49.4% vs 14.1%および29.3% vs 9.8%)。

 

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