以下、論文紹介と解説です。
Katsunuma T, et al. Low-dose l-isoproterenol versus salbutamol in hospitalized pediatric patients with severe acute exacerbation of asthma: A double-blind, randomized controlled trial. Allergol Int 2019. [Epub ahead of print] PMID: 30846304
重症の喘息増悪がある1〜17歳小児患者83人をl-イソプロテレノール持続吸入群およびサルブタモール持続吸入群にランダム化し、3時間後、12時間後の喘息スコアを比較した。
背景
■ 多くの国のガイドラインでは、喘息の急性重症増悪のある小児患者を治療するために、l-イソプロテレノールの持続吸入を推奨していないが、日本では低用量のl-イソプロテレノールが広く使用されている。
■ 低用量のl-イソプロテレノールの有効性がサルブタモールの有効性より優れているかどうかを確認するために、ダブルブラインドランダム化対照比較試験を実施した。
方法
■ modified pulmonary index score(MPIS)によって定義された重症の喘息増悪を有している1〜17歳の入院患者が適格だった。
■ 患者は、酸素を含む大量のネブライザーを介し12時間、l-イソプロテレノール(10μg/ kg / h)またはサルブタモール(500μg/ kg / h)の吸入を受けるようにランダム化された(1:1)。
■ プライマリアウトカムは、試験開始から吸入開始後3時間までのMPISの変化だった。
■ 研究登録番号はUMIN000001991だった。
結果
■ 2009年12月から2013年10月までに、83人(l-イソプロテレノール群42人およびサルブタモール群41人)が試験に登録された。
■ これらのうち、l-イソプロテレノール群の1人は試験薬が投与されなかったため、解析から除外された。
試験参加者フローチャート。
■ サルブタモール群と比較し、l-イソプロテレノール群はMPISをよりより速やかに改善させた。
■ 3時間後のMPISの変化の平均(SD)は、l-イソプロテレノール群で-2.9(2.5)であり、サルブタモール群は-0.9(2.3)だった (difference -2.0, 95% confidence interval -3.1 ~ -0.9; P < 0.001)。
試験開始後3時間・12時間での治療効果。3時間での喘息症状スコア(MPIS)は、イソプロテレノール持続吸入群が有意に改善している。
■ 有害事象は、l-イソプロテレノール群1人(2%)およびサルブタモール群11人(27%)で発生した(P = 0.003)。
有害事象の検討。l-イソプロテレノール群は1人(2%)のみだが、サルブタモール群11人(27%)発生している。
■ 低カリウム血症および頻脈はサルブタモール群でのみ発生した。
結論
■ 低用量のl-イソプロテレノールはサルブタモールよりも有害事象が少なく、より迅速に効果を示す。
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おそらく次の小児喘息ガイドライン改訂では、この結果が記載されるでしょう。
■ 「イソプロ持続吸入」に対し、有効性を実感しながらもエビデンスがないことを憂慮された勝沼先生が、とうとう結果を論文化され発表されました。
■ この結果は、全国の小児科医に対し後の喘息治療に自信をもってあたるための力になることでしょう。
今日のまとめ!
✅ エビデンスに乏しかった喘息発作に対するイソプロテレノール持続吸入にエビデンスが追加された。そして世界のガイドラインで言及されるサルブタモール持続吸入よりも有害事象が少なく、より迅速に効果があることが示された。