以下、論文紹介と解説です。
Ramirez FD, et al. Assessment of Sleep Disturbances and Exhaustion in Mothers of Children With Atopic Dermatitis. JAMA Dermatol 2019. [Epub ahead of print]
英国で実施された出生コホート研究に参加した母児13988組に関し、生後6ヶ月から11歳までの、児のアトピー性皮膚炎と母の睡眠の関連を調査した。
重要性
■ 小児の健康と発達は、両親の心身の健康に強く影響される。
■ 臨床ベースの小規模研究のデータから、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の児の両親には睡眠障害がよく見られることが示唆されているが、縦断的な人口ベースの研究は不足している。
目的
■ ADの有無にかかわらず、児の母親の睡眠障害を経時的に比較して、これらの障害が小児のAD重症度と小児の睡眠障害が関連しているかどうかを確認する。
デザイン、セッティング、参加者
■ 進行中のAvon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)研究では、英国のエイボンに居住し、1991年4月1日から1992年12月31日までが出産予定日であるすべての妊娠中の女性がリクルートされた。
■ 本研究(このコホート試験の二次解析)に対する解析は、2017年9月から2018年9月にかけて実施された。
■ 母児は、生後6ヶ月から11歳までの複数の時点で繰り返された、児のADの活動性と重症度、自己評価による母の睡眠の定量測定の経時的な変化の評価でフォローされた。
主な結果と測定
■ 母の睡眠時間(一晩あたり6時間以上 vs 6時間以下)・入眠障害・早朝覚醒・主観的に評価した不十分な睡眠・日中の疲労を、経時的に2値測定した。
結果
■ この研究では、中央値で11年間(四分位範囲 7-11)、母児13988組が出生時からフォローされた。
■ コホートの中で、母親13972人中11585人(82.9%)が21〜34歳であり、12324人中12 001人(97.4%)が白人だった。
■ 児13978人中7220人(51.7%)が男児だった。
■ ADの有無にかかわらず、睡眠期間(調整オッズ比 [adjusted odds ratio; AOR] 1.09; 95%CI 0.90-1.32)および早朝覚醒(AOR 1.16; 95%CI 0.93-1.46)は同様だった。
■ 対照的に、ADのある児の母は、児が喘息および/またはアレルギー性鼻炎を併発しているかどうかにかかわらず、入眠困難(AOR 1.36; 95%CI 1.01-1.83)であり、主観的に不十分な睡眠(AOR 1.43; 95%CI 1.24-1.66)であり、日中の疲労を報告する可能性が高かった(AOR 1.41; 95%CI 1.12-1.78)。
■ すべての測定において、より重症の児のADだと母の睡眠はより悪化した。
■ 関連の程度や重要性は、児の睡眠障害で調整した後も不変だった。
結論と妥当性
■ ADのある児の母は、小児期の最初の11年間を通し、入眠困難、主観的に睡眠が不十分になり、昼間の疲労を報告した。
■ しかし、児の睡眠障害は母の睡眠障害を十分に説明するものではなく、今後の研究で他のメカニズムを調査する必要がある。
■ ADの児を看護する際に、臨床医は母の睡眠障害と保護者の疲労を考慮すべきである。
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アトピー性皮膚炎は、家族全体の生活の質を下げる。
■ アトピー性皮膚炎の悪化は、皮膚だけでなく様々な「全身的な合併症」を起こすことが次々と報告されるようになりました。
■ 直接の状況だけでも、ここまで家族の生活の質をさげ、しかも「子どものアトピー性皮膚炎が重症になるほど」、その影響は大きくなることがわかります。
■ できるならば早めに重症度をさげていく治療介入が必要なのではと思います。
今日のまとめ!
✅ 子どものアトピー性皮膚炎は、本人だけでなく母の睡眠の質を大きく下げ、その影響は重症であるほど強くなる。