以下、論文紹介と解説です。

Suissa S, et al. Low-dose inhaled corticosteroids and the prevention of death from asthma. The New England journal of medicine 2000; 343(5): 332-6. PMID: 10922423 

健康保険データベースを用いて5歳から44歳までの30,569人の過去1年間の喘息死亡と、喘息薬の使用状況などの関連を検討した。

背景

■ 吸入ステロイドは喘息の治療に有効であるが、それらの使用が喘息による死亡を予防できるかどうかは不明である。

 

方法

■ Saskatchewan ヘルスデータベースを使用して、1975年から1991年までの間に抗喘息薬を使用していた5歳から44歳までの集団ベースのコホートを作成した。

■ 1997年末まで、55歳の誕生日まで、死亡まで、移住まで、健康保険の適用終了、どれかが先に来た方まで、フォローした。

■ 喘息で死亡した被験者が、症例死亡時(基準日)の追跡調査の期間、調査の入力日付、喘息の重症度により、コホート内において対照とマッチしたコホート内症例対照研究を行った。

■ そして、被験者の年齢と性別、基準日の前1年間におけるテオフィリン、噴霧/経口β-アドレナリン作動薬、経口ステロイドの処方数、基準日の前1年間に使用された吸入βアドレナリン作動薬の容器数、基準日前2年間の喘息入院数で調整した後、レート比を計算した。

 

結果

■ コホートは30,569人で構成されていた。

■ 死亡562人のうち、77人が喘息による死亡として分類された。

■ 喘息で死亡した完全なデータがある66人を対照群2681人とマッチさせた。

■ 症例の53%および対照の46%が前年に吸入ステロイドを使用していたが、最も一般的には低用量ベクロメタゾンを使用していた。

■ 容器の平均数は、死亡した患者で1.18本、対照で1.57本だった。

■ 連続した用量反応分析に基づくと、前年に使用された吸入ステロイドの容器数毎に、喘息による死亡率は21パーセント減少したと計算された(調整レート比 0.79; 95パーセント信頼区間 0.65〜 0.97)

論文より引用。吸入ステロイド薬の年間使用本数が増えるほど、喘息死のリスクは低下する。

吸入ステロイドの中止後の最初の3ヶ月間の喘息による死亡率は、薬物を使用を継続した患者による死亡率よりも高かった

 

結論

低用量の吸入ステロイドの定期使用は、喘息による死亡リスクの減少と関連している。

 

スポンサーリンク(記事は下に続きます)



 

吸入ステロイド薬がすべてではないものの、自己判断による中止は重大な事故に繋がるかもしれない。

吸入ステロイド薬はあきらかに喘息死を減らし、日本における喘息死ゼロを達成する原動力のひとつになったといえましょう。

■ ただし、吸入ステロイド薬の限界もまた、あることは確かです。とくに「難治喘息」に対する対応はまだまだ不十分とはいえます。

■ そしてそのような患者さんに関しても、「生物学的製剤」や「サーモプラスティ」といった新しい治療法も登場してきている段階と言えましょう。

■ しかし、現在主役である吸入ステロイド薬を自己判断で中止することはまた、大きな事故に繋がる可能性が高いことを示唆する報告と思われます。

 

今日のまとめ!

 ✅ 吸入ステロイド薬は、喘息死を減らすことは確かである。急な減薬には注意を要する。

 

Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう