以下、論文紹介と解説です。
Liu X, et al. Maternal asthma severity and control during pregnancy and risk of offspring asthma. J Allergy Clin Immunol 2018; 141:886-92.e3.
デンマークで出生した子ども675,379人に関し、妊娠中の母の喘息コントロール状態や重症度と、児の喘息発症リスクの関連を評価した。
背景
■ 妊娠中の重症でコントロール不十分な喘息は、好ましくない周産期の転帰と関連している。
■ しかし、母の喘息と子どもの喘息の重症度と管理の関連に関する現在の理解は不十分である。
目的
■ 子どもの喘息が妊娠中の母の喘息の重症度やコントロールによってどの程度影響されるかを調査することを試みた。
方法
■ 前向き集団ベースのコホート研究を実施した。
■ デンマークの国家レジスターを使用し、単生児(双生児以上ではない)675,379児のコホートを構築した(うち15,014人が喘息のある母から出生)。
■ そのうち、7,188人が妊娠中に活動性喘息の母から出生した。
■ 処方された抗喘息処方薬および医療サービスの使用に基づき、活動性喘息の母を4群に分類した(コントロールされた軽症喘息、コントロールされていない軽症喘息、コントロールされている中等症から重症喘息、コントロールされていない中等症から重症喘息)。
■ アウトカムは、子どもの早期発症一過性喘息、早期発症持続型喘息、遅発型喘息とした。
■ 95%CIのある対数二項モデルを使用し、喘息の各フェノタイプの罹患率(prevalence ratios; PR)を推定した。
結果
■ コントロールされた軽症喘息の母から出生した子どもと比較して、コントロールされていない軽症喘息 (PR, 1.19; 95% CI, 1.05-1.35)、コントロールされている中等症から重症喘息 (PR, 1.33; 95% CI, 1.09-1.63)、コントロールされていない中等症から重症喘息 (PR, 1.37; 95% CI, 1.17-1.61)の母から出生した子どもは、早期発症持続型喘の発症リスクが高かった 。
■ 早期発症型一過性喘息の罹患率は、コントロールされていない喘息の母の子どもので境界線上で増加した。
結論
■ 母のコントロールされていない喘息は、早期発症の持続型・一過性喘息のリスクを高める。
■ 追試できれば、この結果は妊娠中の喘息管理を継続することが、子どもの喘息の特定のフェノタイプの予防できる領域であることを示唆する可能性がある。
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妊娠中の喘息コントロールは吸入ステロイドが主役。その中でもパルミコートが最も多く使用されています。
■ 妊娠自体が喘息を悪化させるケースもあり、喘息コントロールを優先するかどうかを迷う方がいらっしゃるかもしれません。
■ 今回ご紹介した研究結果は、喘息コントロールを躊躇される方に対し、さらに研究結果を付加する意味があります。
■ なお、吸入ステロイド薬 (ICS)は妊娠中のコントローラー療法の主力薬剤であり、 ICSに関連した周産期のリスク(早産、低出生体重、先天性奇形)は増加しないことは、多くの研究で明らかになっています。
■ そして先行研究では、ブデソニド(パルミコート)が最もデータが多いことから、妊娠中の喘息コントロール薬としてよく使用されています。
■ 妊娠中の喘息コントロールを産科の先生にお聞きしながら適切におこなうことは、お母さんのためにも、そしてお子さんのためにも良いのではと思います。
■ パルミコートでコントロール出来ない場合、抗IgE抗体であるオマリズマブ(ゾレア)もひとつの方法かもしれないという報告があります( J Allergy Clin Immunol 2015; 135:407-12.)。
■ さらに、マウスの実験レベルですが、母マウスへの抗IgE抗体の使用が仔マウスのIgE抗体産生を抑える(すなわち、アレルギー体質を防御するかも)という報告がなされ、注目されています(アレルギー予防にゾレアを使いなさいという意味ではありません)。
今日のまとめ!
✅ コントロールされていない母の喘息は、子どもの早期発症の持続型・一過性喘息のリスクを高めるかもしれない。