以下、論文紹介と解説です。
Lee SJ, et al. Prevalence and risk factors of urticaria with a focus on chronic urticaria in children. Allergy, asthma & immunology research 2017; 9:212-9.
韓国のSeongnam Atopy Project (SAP 2015)という大規模横断研究で、4,076人(4歳~13歳)の蕁麻疹の有症率とリスク因子を評価した。
目的
■ 小児における急性および慢性じんましんの有病率および危険因子に関するデータは限られている。
■ 目的は、有病率を決定し、韓国の小児の急性および慢性蕁麻疹の危険因子を特定することだった。
方法
■ この集団ベースの研究では、韓国におけるSeongnam Atopy Project (SAP 2015)に2015年に登録された4,076人(4歳~13歳)が調査された。
■ 両親は、蕁麻疹の期間、重症度、誘発因子に関する質問を含む蕁麻疹アンケートを完了した。
■ ビタミンD、総好酸球数 (total eosinophil count ; TEC)、総IgE値の採血を464人に実施し、皮膚プリックテスト 503人に実施した。
結果
■ 生涯を通じてのじんましん、急性じんましん、慢性じんましんの有病率は、それぞれ22.5%、13.9%、および1.8%(慢性持続性じんましん 0.7%;および慢性再発性じんましん 1.1%)だった。
管理人注;
じんましんは「過去12か月以内に、あなたの子どもはほてり、かゆみ、蚊に刺されたような発疹、皮膚の腫れがありましたか?」という質問で評価し、
「現在のじんましん」は、その期間に従って急性または慢性じんましんと定義された。
「慢性持続性じんましん」は、1週間に3回以上、6週間以上続く毎日の症状または発症によって定義だれた。
■ 急性じんましんはアレルギー性疾患および親のアレルギー歴と有意に関連していた(P <0.001)が、慢性じんましんはこれらの臨床的要因と関連していなかった。
■ 慢性蕁麻疹と対照において25-ヒドロキシビタミンD値に有意差はなかった(P = 0.124)。
■ 慢性持続性蕁麻疹は、新居での生活 (aOR=2.38, 95% CI=1.02-5.54, P=0.044) 、高収入の家族である(aOR=4.24, 95% CI=1.24-14.56, P=0.022)と関連していた。
結論
■ 計1.8%が慢性じんましんに罹患していることが判明した。
■ 新しい住居に住み高収入の家族に属していると、慢性的なじんましんのリスクが高まる。
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小児のじんましんの有症率調査として貴重。小児のじんましんは「2割以上、1回は経験することがある」という情報提供に使えそうだ。
■ 日本人小児に関するじんましんの有症率のデータは少なく、地理的に近い韓国からの報告は貴重と言えましょう。
■ アンケート調査でしかも横断研究ですので、高く見積もられる可能性はありますが、おおむね日常診療に合致しそうな印象のデータです。
■ ずっと前に何かの雑誌で、「日本人の1/4は一生に1回はじんましんを経験する」という文章を読んだ記憶があるのですが、、どこに書いてあったか探しても見つからなくて(御存じでしたらご教示ください)。
■ 西洋での有症率データは、もう少し低いという報告があります(Arch Dermatol 1998; 134:319-23.)(Pediatr Dermatol 2004; 21:102-8.)。
■ 家庭での収入とじんましんの関連は何故かは難しいところですが、多くの疫学研究で収入とアレルギー疾患には有意差が検出されると報告されています。
今日のまとめ!
✅ 韓国における小児期のじんましんの有症率は、「生涯を通じてのじんましん」が22.5%、「過去12ヶ月以内の急性じんましん」が13.9%、「慢性じんましんが1.8%」と推定されていた。