以下、論文紹介と解説です。

Stefan MS, et al. Association of Antibiotic Treatment With Outcomes in Patients Hospitalized for an Asthma Exacerbation Treated With Systemic Corticosteroids. JAMA Intern Med 2019. [Epub ahead of print]

米国の急性期病院542施設に喘息増悪のために入院し、全身性ステロイドで治療された成人19811人に対し、退院後30日以内の治療失敗を比較した。

重要性

■ 専門家による学会ガイドラインでは、喘息増悪の治療にエンピリカルな抗生物質の使用を認めていないにも関わらず、高い抗生物質処方率が米国などで記録されている。

 

目的

■ 喘息のために入院し、ステロイドで治療された患者におけるアウトカムに対する抗生物質による治療との関連性を確認する。

 

デザイン、設定、参加者

■ 2015年1月1日から2016年12月31日まで、米国の急性期病院542施設に喘息増悪のために入院し、全身性ステロイドで治療された19 811人の成人のデータにおける後ろ向きコホート研究

 

曝露

■ 早期の抗生物質治療 (入院の初めの2日間に開始され、最低2日間使用される抗生物質による治療として定義)。

 

主要アウトカムと測定

■ 主要評価項目は入院期間だった。

■ その他の評価項目は、退院後30日以内の治療失敗(人工呼吸器の開始、入院2日後の集中治療室への入室、院内死亡、喘息による再入院)、入院のコスト、抗生物質関連の下痢だった

■ 多変量調整、傾向スコアマッチング、傾向重み付け、および機器変数分析を用いて、抗生物質治療と転帰との関連性を評価した。

 

結果

■ 19811人のうち、年齢の中央値(四分位範囲 [IQR])は46歳(34-59歳)であり、女性14389人(72.6%)、白人が8771人(44.3%)、5120健康保険(25.8%)がMedicareがだった。

■ 抗生物質は8788人に処方された(44.4%)。

■ 抗生物質で治療されていない患者と比較して治療された患者は、より年齢が高く(年齢中央値[IQR]、48歳 [36-61] vs 45歳 [32-57])、白人である場合が多く(48.6% vs 40.9%)、喫煙者が多く(6.6% vs 5.3%)、併存疾患の数が多かった(例:うっ血性心不全; 6.2% vs 5.8%)。

■ 抗生物質で治療された患者は、入院期間が有意に長く(中央値[ IQR]、4日 [3-5] vs 3日 [2-4])、治療失敗率には差がなかった(5.4% vs 5.8%)。

■ 傾向スコアマッチング分析では、抗生物質治療を受けた場合は、入院期間が29%長く(入院期間比 1.29; 95%CI 1.27-1.31)、入院費用が高く(費用の平均 [IQR] ; 4776ドル[3219ドル-7373ドル] vs 3641ドル[2346ドル-5942ドル])、治療失敗のリスクに差がなかった(傾向マッチングスコアによるオッズ比; 0.95; 95% CI, 0.82-1.11)

■ 多変数での調整、傾向スコアの重み付け、操作変数法分析、さらにいくつかの感度分析でも同様の結果が得られた。

 

結論と妥当性

抗生物質による治療は、より長い入院期間、より高い入院費、同程度の治療失敗のリスクと関連している可能性がある

■ これらの結果は、喘息のために入院した患者に対する不適切な抗生物質処方を減らす必要性を強調している。

 

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喘息発作による入院時の抗菌薬の使用は、治療の失敗率には差がないにも関わらず入院期間を伸ばしてしまうかもしれない。

■ 喘息発作の多くはウイルス感染に伴うものです。ですので、抗菌薬に関して直接の効果はないといえるでしょう。

■ しかし、重症の喘息発作に対して抗菌薬の併用はしてしまいがちです。

■ 今回の報告は、抗菌薬の使用に警鐘をならす結果と言えましょう。

■ とはいえ、インフルエンザで集中治療を行っている場合は、抗菌薬も死亡率を減らすという報告もありますので、やはり状況に応じるといえるでしょう。

■ なお、傾向スコア分析は、コホート試験をランダム化比較試験に見立てるような統計手法で、最近よく見かけるようになりました。個人的には、まだランダム化比較試験に見立てるのはリスクが高いとは思っていますが、観察研究のエビデンスレベルを上げることができる手法ともいえ、重要な報告とも思います。

■ しかし、傾向スコア分析が交絡因子を完全に除外できたかどうか不安も残ります。「抗菌薬をつかったからかえって悪化した」と思うのもまた問題を起こしかねないのではとも思います。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ 全身性ステロイドを使用する成人の喘息発作に対し、抗菌薬を早期に使用すると、治療の失敗率には差がないにも関わらず入院期間を伸ばし、コストをあげてしまうかもしれない。

 

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