以下、論文紹介と解説です。

Haeck IM, et al. Topical corticosteroids in atopic dermatitis and the risk of glaucoma and cataracts. Journal of the American Academy of Dermatology 2011; 64:275-81.

成人アトピー性皮膚炎患者88人の緑内障と白内障の発症を評価し、それらがステロイド外用薬の眼瞼および眼の周囲の使用と関連しているかどうかを確認した。

イントロダクション

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)患者には、ステロイド外用薬使用に関連した緑内障や白内障の発症についての懸念がある。

 

目的

■ AD患者における緑内障と白内障の発症を評価し、それらがステロイド外用薬の累積投与量や眼瞼および眼窩周囲領域におけるステロイド外用薬の使用と関連しているかどうかを決定する。

 

方法

■ AD患者88人がユトレヒト大学医療センターからリクルートされた。

■ 患者は面談されて、ADに関連した眼瞼および眼窩周囲の皮膚といったさまざまな要因を評価するアンケートに回答した。

■ 前の年度におけるステロイドの使用は薬局記録から得られた。

■ 緑内障や白内障の存在について眼科検査を実施した。

 

結果

平均年齢37.2±14.3歳(平均±SD)の88人(男性41人/女性47人)のうち、1人に一過性の眼圧高値があり、1人の視神経杯形成があった(視野に緑内障性障害なし)。

7人が白内障(AD関連1人、ステロイド誘発性2人、年齢関連4人)の診断を受けた。

ステロイド誘発性白内障患者は2人とも全身性ステロイドを使用していた。

88人中37人が眼瞼および眼窩周囲領域にステロイド外用薬(クラスIIIおよびIV)を使用しており、使用頻度の平均は1週間あたり3.9日、4年間で6.4ヶ月だった。

 

制限事項

■ サンプルサイズが小さく、眼瞼/眼窩周囲領域へのステロイド外用薬の使用についての患者の思いだしに対する客観性、薬局記録からのステロイド外用薬使用の過大評価、生涯にわたるステロイドの使用に関する情報の欠如が、研究の限界だった。

 

結論

■ この後向き研究において緑内障は見られなかった。

AD患者の2人にステロイド誘発性白内障を認めたが、これはおそらく全身性ステロイドの使用によって引き起こされたものだった。

■ 眼瞼および眼窩周囲領域へのステロイド外用薬の使用は、さらに長期間にわたっても、この研究集団における緑内障や白内障の発症とは関連はなかった。

 

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目の周囲へのステロイド外用薬は、緑内障の発生の可能性はそれほど高くはなく、白内障は刺激による可能性がより高いようだ。ただし、潜在的なリスクはあり積極的に変更していく必要性はある。

■ この研究をもって、眼周囲にステロイド外用薬を使用してよいと言いたいわけでは全くありません。

■ 早い段階でプロトピック外用薬などに切り替え、副作用の懸念を減らす必要性があるでしょう。

■ 最近、(保険適応があるわけではありませんが)「眼球」にプロトピック外用薬(0.03%)を使用して重症角結膜炎に有効だったといる報告もあります(Arquivos brasileiros de oftalmologia 2017; 80(4): 211-4.)。

■ また白内障に関しては、ステロイド外用薬以上に眼に対する外部的な刺激(殴打など)が原因となっていることがわかってきており、「ステロイドによる白内障」と「アトピー性皮膚炎による白内障(殴打が掻破によるもの)」の性状が異なることが報告されています(海老原伸行,田中かつみ:アトピー性白内障発症メカニズムについての一考察.日本白内障学会誌,13:66-69,2001.)

■ 眼の周囲に関しては、今の時期のように花粉の最大飛散期にはよく見かけます。その場合はスギの舌下免疫療法などを併用してステロイド外用薬の減量を図りたいものです。

今日のまとめ!

 ✅ 目の周囲へのステロイド外用薬は潜在的に懸念はあるが、緑内障の発生の可能性はそれほど高くはなく、白内障は刺激による可能性がより高いようだ。ただし、タクロリムス外用薬など、積極的により眼圧に影響しない外用薬に変更していく必要性はあるだろう。

 

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