以下、論文紹介と解説です。
Du Toit G, et al. Early consumption of peanuts in infancy is associated with a low prevalence of peanut allergy. J Allergy Clin Immunol 2008; 122:984-91.
ユダヤ人児童(英国5171人、イスラエル5615人)のピーナッツアレルギーの罹患率を調査し、乳児と母親のピーナッツ摂取とピーナッツアレルギーの関係を評価した。
背景
■ イギリス(UK)、オーストラリア、そして最近まで北米でも、乳児期のピーナッツ除去を推奨するガイドラインにもかかわらず、ピーナッツアレルギー(peanut allergy; PA)はこれらの国々で増加し続けている。
目的
■ 我々はイスラエルとイギリスのユダヤ人の小児においてPAの罹患率を確認し、乳児と母親のピーナッツ摂取とPAの関係を評価しようとした。
方法
■ 臨床的に検証されたアンケートにより、ユダヤ人児童(英国5171人、イスラエル5615人)のPAの罹患率を確認した。
■ 2つ目の検証されたアンケートは、ユダヤ人児童(英国77人、イスラエルで99人)のピーナッツ摂取と離乳食を評価した。
結果
■ 英国におけるPAの有病率は1.85%であり、イスラエルにおける有病率は0.17%であった(P <0.001)。
■ アトピーを考慮したにもかかわらず、PAで調整されたリスク比は小学生で9.8(95%CI 3.1-30.5)だった。
■ ピーナッツは、英国よりも、イスラエルでは早く(離乳食に)導入され、より頻繁にそしてより多く摂取される。
■ 生後8〜14ヶ月のイスラエルの乳児におけるピーナッツの摂取量は平均7.1 g/月のピーナッツタンパク質であり、英国では0 gである(P <.001)。
■ ピーナッツが摂取される回数の中央値は、イスラエルでは1か月に8回、イギリスでは1か月に0回だった(P <0.0001)。
結論
■ 我々は、英国のユダヤ人小児がイスラエルのユダヤ人小児より10倍高いPAの有病率であることを示した。
■ この違いは、アトピー、社会階級、遺伝的背景、ピーナッツのアレルゲン性の違いによって説明できない。
■ イスラエルの乳児は生後1歳までに大量のピーナッツを摂取するが、英国の乳児はピーナッツを除去している。
■ これらの調査結果は、除去よりもむしろ乳児期のピーナッツの早期導入がPAの発生を予防するかどうかの問題を提起する。
スポンサーリンク(記事は下に続きます)
この研究が鏑矢になり、離乳食早期開始のランダム化比較試験へとつながっていきました。
■ この疫学的な研究が「早期離乳食開始」のランダム化比較試験の実施を即し、LEAPスタディにつながっていき、現在の「早期離乳食開始」のコンセンサスを形成していくことになります。
■ 「経口免疫寛容」と「経皮感作」を軸とした「二重抗原曝露仮説」が提唱されたのは2008年です。
■ それから約10年、この疫学的研究は経口免疫寛容を証明するその端緒のひとつとなりますが、それが約10年前ということになり、医学のドラスティックな変化を感じます。
■ 経皮感作も同じLack先生らのグループが、横断研究からコホート研究へつなげて証明しました。巨大な業績ですね。
今日のまとめ!
✅ ピーナッツの離乳食導入の習慣が異なる、イスラエルと英国のピーナッツアレルギー罹患率からピーナッツアレルギー予防研究のランダム化比較試験につながることになった。