以下、論文紹介と解説です。

Olsen JR, et al. Time to resolution and effect on quality of life of molluscum contagiosum in children in the UK: a prospective community cohort study. Lancet Infect Dis 2015; 15:190-5.

4~15歳の伝染性軟属腫の小児306人が、いつごろ軽快したか、また家族内感染や生活の質を前方視的に評価した。

背景

■ 伝染性軟属腫は世界で最も流行している50疾患の一つであるが、小児の伝染性軟属腫に関する疫学的データは不十分である。

■ そこで、英国の小児における伝染性軟属腫の軽快までの期間、家庭内の小児への接触伝播、生活の質への影響について説明することを目的とした。

 

方法

■ 2013年1月1日~10月31日に英国における4~15歳の伝染性軟属腫の小児306人を、一般開業医による紹介または自発的な受診(両親のための検証されたMolluscum Contagiosum診断ツール [Molluscum Contagiosum Diagnostic Tool for Parents; MCDTP]を使用して診断された)によりリクルートされた。

■ すべての参加者は、特徴、伝播、生活の質に関するアンケートに記入するよう求められた。

■ 小児皮膚科生活の質指数(Children's Dermatology Life Quality Index; CDLQI)を用いて生活の質を計測した。

■ 参加者を毎月前方視的にフォローし、伝染性軟属腫からの軽快と同じ家庭の他の子どもへの伝播を、患児の病変が観察されなくなるまで調査した。

 

結果

平均軽快期間は13.3か月(SD8.2)だった。

269人中80人(30%)が18カ月以内に軽快せず、36例(13%)は24カ月経過しても軽快しなかった

250例中102例(41%)は、家庭内の他の子どもへの伝播を記録した。

■ 伝染性軟属腫は、多くの参加者の生活の質に小さな影響を与えたが、301人中33人(11%)は生活の質に大きな影響があった(CDLQIスコア>13)。

■ 病変の数が多いほど、QOLへの影響が大きかった(H=55.8; p<0.0001)。

 

解釈

■ 伝染性軟属腫の小児のうち10人に1人は、生活の質に相当な影響を及ぼす可能性が高く、したがって、一部の小児、特に多くの病変があるか、または生活の質に重大な影響を及ぼすと特定された小児については、治療を考慮すべきである。

■ 伝染性軟属腫の患児とその両親には、疾患の予想される自然史に関する正確な情報を与える必要がある。

■ このデータは、これまでのところ最も信頼できる軽快までの予想期間の推定値を提供し、現実的な見込みを設定するのに役立てることができる。

 

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伝染性軟属腫はなかなか自然には改善しないと言えるようだ。摘除との治療選択肢のバランスを説明する必要があるだろう。

■ 水いぼ(伝染性軟属腫)は思った以上に改善しないことがわかります。

■ 伝染性軟属腫があってもプールなどは参加できます。ただし、家族内感染は比較的多いと考えるべきでしょう。

小児皮膚科学会のHPから引用 水いぼとプール
皮膚の学校感染症について
プールに入ってもいいの?
1) 伝染性膿痂疹(とびひ)
かきむしったところの滲出液、水疱内容などで次々にうつります。プールの水ではうつりませんが、触れることで症状を悪化させたり、ほかの人にうつす恐れがありますので、プールや水泳は治るまで禁止して下さい。2) 伝染性軟属腫(みずいぼ)
プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することはできるだけ避けて下さい。プールの後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう。3) 頭虱(あたまじらみ)
アタマジラミが感染しても、治療を始めればプールに入って構いません。ただし、タオル、ヘアブラシ、水泳帽などの貸し借りはやめましょう。

4) 疥癬(かいせん)
肌と肌の接触でうつります。ごくまれに衣類、寝床、タオルなどを介してうつることがありますが、プールの水ではうつることはありませんので、治療を始めればプールに入っても構いません。ただし、角化型疥癬の場合は、通常の疥癬と比べ非常に感染力が強いので、外出自体を控える必要があります。

平成25年5月
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会

■ 個人的には、まず皮膚のケアを勧めたうえで、皮膚科での摘除を勧めています。

■ 摘除せずに経過観察も一つの方法とも思われますが、「どれくらい持続するのか」「家族内感染もありうる」「さらに悪化する場合もある」などは説明する必要はあるでしょう。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ 昔の日本からの報告で、水いぼの改善までの平均期間は半年程度と報告されていたが、最近の英国からの報告では13ヶ月とやや長い結果だった。

 

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