以下、論文紹介と解説です。

Thoms F, et al. Immunization of cats to induce neutralizing antibodies against Fel d 1, the major feline allergen in human subjects. J Allergy Clin Immunol 2019.

ネコの主要抗原であるFel d1を含む複合ワクチンによりネコの免疫化し、アレルゲン性が低下するかを検討した。

背景

■ ヒトにおけるネコアレルギーは通常、,主要なネコアレルゲンであるFel d1によって引き起こされ、西洋の集団において約10%に見出される。

■ 現在、ネコアレルギーに対し有効で安全な治療法はない。

■ アレルギー患者は通常、ネコを避けるか、アレルギー症状を治療しようと試みる。

 

目的

■ ネコの主要アレルゲンFel d1に対し免疫化することにより、ヒトに対するFel d1誘発性アレルギーを治療する新しい戦略を開発した。

 

方法

組換えFel d1と破傷風毒素由来のユニバーサルT細胞エピトープtt830‐843(CuMVTT)を含むキュウリモザイクウイルス由来ウイルス様粒子から成る複合ワクチンによりネコの免疫化に使用した。

■ 最初の忍容性および免疫原性試験はブースト注射を含み、Fel-CuMVTTワクチン単独またはアジュバントとの併用により実施された。

グラフィカルアブストラクト。

 

結果

■ ワクチンの忍容性は良好であり、明らかな毒性は認められなかった。

■ 全てのネコは、強く持続した特異的IgG抗体反応を誘導した。

誘導した抗Fel d1抗体は高親和性であり、in vitroとin vivoの両方の試験において強い中和能を示した。

■ そして内因性アレルゲン量の低下と涙液中のアレルゲン性の低下が認められた。

 

結論

Fel‐CuMVTTによるネコへのワクチン接種は中和抗体を誘導し、ネコに対しアレルギーのあるヒトの症状を緩和させる可能性がある。

■ アレルギーをもつネコの飼い主は、喘息のような慢性疾患を発症するリスクを減らしネコに対する耐性を高めることができるので、ヒトの被験者と動物の両方がこの治療から利益を得ることができる。

■ その結果、ネコは家庭にとどまることができ、動物保護施設に手放す必要がなくなるかもしれない。

 

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まだまだ実用化は先でしょうけれども、ヒトに対する試験よりもハードルは低いかもしれない。

■ もちろん動物愛護の観点から動物に対する臨床試験も十分な配慮を要しますが、すくなくとも人間に対する臨床試験よりはハードルが低い方法でしょう。

■ ただし、ネコ抗原は飼育している家庭では200倍以上に増えるとされていますので、どれくらいの低減かにより症状の誘発が抑えられるかは変わってきそうですね。

■ しかし、愛猫と生活を続けるためにワクチンを実施することができれば、ネコにとっても人間にとっても選択枝の一つになる可能性は秘めているといえるでしょう。

 

今日のまとめ!

 ✅ ネコの抗原性をさげるワクチンが開発されている。

 

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