以下、論文紹介と解説です。

Chu DK, et al. Oral immunotherapy for peanut allergy (PACE): a systematic review and meta-analysis of efficacy and safety. Lancet 2019. [Epub ahead of print]

ピーナッツ経口免疫療法を評価した12試験 (1041人;年齢中央値 8.7歳)において、効果と安全性のメタアナリシスを実施した。

背景

■ 経口免疫療法はピーナッツアレルギーに対する新しい実験的治療であるが、その利点と有害性は不明である。

■ ピーナッツアレルギーに対する経口免疫療法 vs アレルゲン除去もしくはプラセボ(経口免疫療法なし)の有効性と安全性を系統的にレビューした。

 

方法

■ Peanut Allergen immunotherapy, Clarifying the Evidence(PACE)システマティックレビュー&メタアナリシスにおいて、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Controlled Register of Trials、Latin American&Caribbean Health Sciences Literature、China National Knowledge Infrastructure、WHOのClinical Trials Registry Platform、US Food and Drug Administration、European Medicut Agency Agencyを、データベースの開始から2018年12月6日までを言語の制限なしに、ピーナッツアレルギーに対する経口免疫療法 vs 経口免疫療法なしを比較したランダム化比較試験を検索した。

■ 研究をスクリーニングし、データを抽出し、バイアスリスクを独立して2回評価した。

■ 主なアウトカムは,アナフィラキシー、アレルギー、有害反応、エピネフリンの使用、生活の質であり、ランダム効果によりメタアナリシスを実施した。

■ GRADEアプローチによりエビデンスの確実性(品質)を評価した。

■ 本試験はPROSPEROのナンバーCRD42019117930に登録されている。

 

結果

12試験 (n=1041; 試験全体の年齢中央値 8.7歳 [IQR 5.9-11.2])では、経口免疫療法と経口免疫療法なしを比較して、増量中および維持中のアナフィラキシーのリスク (リスク比 [RR] 3.12 [95%信頼区間 1.76-5.55]; I2=0%; リスク差 [RD] 15.1%; 高確実性)、アナフィラキシー発症頻度 (incidence rate ratio [IRR] 2.72 [1.57-4.72]; I2=0%; RD 12.2%,高確実性)、エピネフリン使用(RR 2.21[ 1.27-3.83]; I2=0%; RD 4·5%; 高確実性)が増加した (相互作用= 0.92)。

■ 経口免疫療法は重篤な有害事象 (RR 1.92 [1.00-3.66]; I2=0%; RD 5.7%; 中確実性)、非アナフィラキシー反応 (嘔吐 RR1.79 [95% CI 1.35-2.38]; I2=0%; 高確実性; 血管性浮腫 2.25 [1.13-4.47]; I2=0%; 高確実性; 上気道の呼吸器反応 1.36 [1.02-1.81]; I2=0%; 中確実性; 下気道反応 1.55 [0.96-2.50]; I2=28%; 中確実性)を増加させた。

■ 外来での即時型反応を予防するための指示された負荷試験を通過させることは、経口免疫療法でより実施された(RR 42.12 [95% CI6.82-22.61]; I2=0%; RD36.5%; 高確実性)。

QOLは群間で差がなかった(親および自分自身の報告を複合したRR 1.21 [0.87−1.69]; I2=0%; RD 0.3%; 低確実性)

■ 所見は、IRR、逐次の試験、サブグループ解析、感度解析において頑健であった。

 

解釈

■ ピーナッツアレルギー患者において、利用可能なピーナッツ経口免疫療法レジメンは脱感作を効果的に誘導するにもかかわらず、除去やプラセボと比較して大幅にアレルギー反応やアナフィラキシー反応を増加させることを高確実性のエビデンスが示唆している。

■ より安全なピーナッツアレルギー治療アプローチと、患者にとって重要なアウトカムを評価する厳密なランダム化比較試験が必要とされている。

 

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現状では、経口免疫療法は標準療法への道のりは長そうだ。

■ 経口免疫療法は、必ずしも安全ではありません。

■ 負荷試験を実施して「必要最小限の除去」を目指しつつ、「同量で継続」が一つの方法と言えるかもしれません。

■ もし増量するならば、十分な臨床経験と患者さんの同意のもと、慎重な対応が求められるでしょう。

■ 一方で、過剰な除去はかえって食べられなくなる可能性があります。

アレルギー診療をとりまく状況は、「多くの知識と経験」が必要になりつつ、「標準化も難しく」、「患者さんの数も多い」、そういう環境になってきています

■ より丁寧な治療や介入が必要になっている現状の中で、限られた時間とマンパワーでどう食物アレルギーと戦っていくのか、苦しみながら戦っていく必要がありそうです。

 

今日のまとめ!

 ✅ ピーナッツ経口免疫療法は、脱感作を効果的に誘導するが、アレルギー反応やアナフィラキシー反応を増加させる。

 

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