以下、論文紹介と解説です。

Golden DB, et al. Outcomes of allergy to insect stings in children, with and without venom immunotherapy. N Engl J Med 2004; 351:668-74.

昆虫刺傷をうけアレルギー反応のあった小児512人に関し、平均18年後の経過を確認した。

背景

■ 小児は昆虫刺傷に対するアレルギーを「アウトグロー」すると考えられているが、この反応の自然史を記録した報告はない。

■ 昆虫毒免疫療法を受けていない患者と治療を受けた患者における、10~20年後の小児期の昆虫刺傷に対するアレルギー反応の転帰を検討した。

 

方法

■ 1978年~1985年に小児1033人で昆虫刺傷に対するアレルギー反応を診断し、そのうち356人は昆虫毒免疫療法を受けた。

■ 1987年~1999年までに発症した昆虫刺傷の転帰を決定するために、1997年1月~2000年1月に電話や郵便でこれらの患者の調査を実施した。

 

結果

1033人中512人(50%)が返信し、平均追跡期間は18年、治療した患者の昆虫毒免疫療法の平均期間は3.5年、昆虫刺傷の発生率は43%だった。

全身反応は、無治療患者(111例中19例; 17%; P=0.007)よりも昆虫毒免疫療法を受けた患者(64人中2人; 3%)では、より少なかった

■ 中等症から重症の反応の既往がある患者は、昆虫毒免疫療法を受けた患者(患者43人中2人; 5%)よりも治療を受けていない患者(22例中7例; 32%)の方が反応率が高かった(P=0.007)。

■ 治療歴があり、軽症(皮膚の症状)における全身反応(すなわち皮膚症状のみ)の既往歴のある患者では、昆虫刺傷のあった21人のいずれにも全身反応はみられなかった。

 

結論

■ 相当数の小児は臨床的に、昆虫刺傷に対するアレルギー反応を克服できない。

小児における昆虫毒免疫療法は、治療中止後10~20年経過しても昆虫刺傷に対する全身反応のリスクを有意に低下させ、長期的な有益性は成人にみられる有益性よりも大きい

 

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日本では、基本的には昆虫毒に対する免疫療法は難しい。

■ とくにハチ毒に関してはプロトコールも確立してはいますが、日本では免疫療法用の製剤がないという問題があります。

■ 私は実施した経験はないですが、日本の免疫療法に対する保険や薬剤の少なさは何とかならないものかと良く思います。

■ とはいえ、免疫療法が実施していない患者でも111例中19例(17%)程度であるともいえるでしょう。

 

今日のまとめ!

 ✅ 昆虫刺傷後に再度刺傷を受けたとして、全身反応が17%だったという結果だった。

 

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