以下、論文紹介と解説です。
Arellano FM, et al. Risk of lymphoma following exposure to calcineurin inhibitors and topical steroids in patients with atopic dermatitis. J Invest Dermatol 2007; 127:808-16.
PharMetricsデータベースを用いて293,253例中のリンパ腫発症294例を特定し、発症リスク要因を検討した。
背景
■ 免疫抑制薬の全身的使用は、移植時のリンパ腫のリスクを増加させる。
方法
■ そこで、アトピー性皮膚炎患者のコホートを対象に、免疫抑制薬外用剤とリンパ腫との関連を評価するため、PharMetricsデータベースを用いたコホート内症例対照研究を実施した。
■ リンパ腫症例を特定し、追跡期間をマッチさせた各症例の4人の対照群を無作為に選択した。
■ 条件付きロジスティック回帰を用いて、免疫抑制薬外用剤とリンパ腫の関連を示すオッズ比(odds ratio; OR)と95%信頼区間(confidence intervals; CI)を計算した。
結果
■ リンパ腫は293,253例中294例、20歳未満で81例で発症した。
■ 調整後の解析では、以下のOR(95%信頼区間)が得られた。
■ 重症度(OR 2.4;95% CI 1.5~3.8)、経口ステロイド1.5(1.0~2.4)、「とても強い力価」ステロイド外用薬1.2(0.8~1.8)、「低い力価」ステロイド外用薬 OR 1.1(0.7~1.6)。
■ ピメクロリムス外用薬 0.8(0.4~1.6)、タクロリムス外用薬 OR 0.8(0.4~1.7)、ステロイド外用薬・ピメクロリムス・タクロリムス外用薬の併用 1.0(0.3~4.1)。
悪性リンパ腫の発症リスク。
重症アトピー性皮膚炎がもっとも高い悪性リンパ腫の発症リスク。
結論
■ カルシニューリン阻害剤の外用を受けた患者では、リンパ腫のリスク増加は認められなかった。
■ 疾患の重症度がアウトカムに及ぼす影響と、薬物の真の効果とを区別することは困難である。
■ しかしながら、調整された解析では、ADの重症度がリンパ腫のリスク増加と関連する主な要因だった。
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プロトピック外用薬そのものに心配されている方に対し、「アトピー性皮膚炎そのもの」のリスクもお伝えする情報になるかもしれません。
■ プロトピック外用薬を使う際に、「がん」を心配される方はたしかに少なからずおり、医師の中にも、「プロトピックが副作用が強い薬」という誤解をお持ちの方もいらっしゃいます。
■ しかし、むしろアトピー性皮膚炎の重症度があがることもまた、リスクになるのだといえますし、「皮膚の炎症ががんの要因になる」というと納得できる結果でもあります。
■ その方々に伝える際の情報のひとつになるかもしれません。
今日のまとめ!
✅ アトピー性皮膚炎の重症度そのものが、悪性リンパ腫の原因になるかもしれない。