以下、論文紹介と解説です。
Schaffer JV, Berger EM. Molluscum Contagiosum. JAMA Dermatol 2016; 152:1072.
伝染性軟属腫(水いぼ)の患者さん向けのレビュー。
はじめに
■ 伝染性軟属腫はよくみられるウイルス感染症で、皮膚に小さな隆起ができる。
■ 軟属腫は多くの場合、健康な小児に発症する。
■ 軟属腫ウイルスは、隆起部に直接皮膚同士が接触することによって他の人に感染し、掻いたり擦ったりすることによって患者自身の皮膚の他の部位(「自家接種」)に感染する。
■ また、隆起をこすってウイルスに感染した物(例; タオル、ジムマット、カミソリ)に接触することによっても感染する。
■ 軟属腫が10代の若年者者や成人に発生するのは、性行為が原因の場合がある。
■ 軟属腫ウイルスは体の表面にのみ感染し、体内には広がらない。
■ 軟膜の隆起は通常、ウイルスにさらされてから2~6週間後に発症する。
■ 症状は数ヶ月から数年、平均で約1年続く。
■ その間に一部の隆起が自然に軽快し新しい隆起ができることもある。
症状
■ 軟属腫の病変はドーム状の光沢のある、中央にくぼみもしくは白っぽい「芯」をもつ隆起で始まる。
■ ピンクから皮膚色であり、ピンヘッドから鉛筆の消しゴムサイズである。
■ 軟属腫は手掌や足底を除く皮膚のあらゆる部位に発症しうる。
■ よくみられる部位は、頸部、腋窩、胸部側面、大腿、臀部、性器、顔面である。
■ 隆起の数は1個から数十個まであり、多くの場合、それらは群を形成している。
元レビューから引用。
■ 軟属腫の周囲の皮膚はピンク色になり、荒れ、かゆみを伴う。
■ この湿疹様の反応は引っ掻きにつながり、ウイルスの拡散につながる。
■ 軟属腫の隆起自体が赤く腫れ、膿で満たされたにきびができることもある。
■ これは通常、免疫系がウイルスと戦い、感染を排除し始めていることを示す良い徴候である。
■ 軟属腫の隆起が消退すると、時間経過とともに消退する桃紫色や白色の斑点が残ることがある。
診断
■ 軟属腫は皮膚を見れば診断できる。
■ 診断を確定するために、擦過標本や生検が行われることもある。
管理
■ 軟属腫は数ヶ月から数年で自然に軽快するため、隆起が気にならなければ治療の必要はない。
■ 保育園や学校を休ませる理由はない。
■ 軟属腫患者の大多数は、多くの隆起が残存していても免疫系は正常である。
■ しかし免疫疾患患者は重症感染症を有するかもしれない。
ウイルスの拡散を防ぐには
■ 隆起を引っかいたり、つまんだりしてはいけない。
■ かゆみを伴う発疹または湿疹がある場合は、ステロイド外用薬(市販のヒドロコルチゾンや処方薬)を1~2週間毎日塗布する。
■ 兄弟姉妹との入浴中は、タオルの共有や肌同士の接触を避ける。
■ 軟属腫がある箇所では、ひげそりや性的接触を避ける。
■ 小児に対する治療が要望される場合、一般的な院内療法はカンタリジン(「マメゾウムシ汁」)である。
■ これは個々の隆起に使用され、2~4時間で洗い流す。
■ その後、液体で満たされた水疱が形成され、理想的には水疱が治癒するにつれて隆起が軽快する。
■ クリニックでの「摘除術」や軟属腫のこすり取り、液体窒素での隆起を凍らせるのは、年長の小児、10代の若年者、成人でよく実施される。
■ 隆起の表面を刺激したり、免疫系を活性化させるクリームを自宅で使用することも有用な場合がある。
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医療環境が日本と異なるためにそのままを日本で適応はできないが、参考になるレビュー。
■ カンタリジンに関しては、最近レビューも増えて来ているようです。
■ 私は、カンタリジンに関しては皮膚に水疱を来すような「やや危険な」薬剤のように感じていますが、後日その報告の一部をご紹介しようと思います。
今日のまとめ!
✅ 2016年のJAMA Dermatologyに、伝染性軟属腫(水いぼ)の患者さん向けのレビューが発表されており、翻訳してご紹介した。