以下、論文紹介と解説です。

Wintersand A, et al. Allergens in dog extracts: Implication for diagnosis and treatment. Allergy 2019.

5種類の皮膚プリックテスト溶液と、イヌ120匹から3種類の解剖学的部位から毛を採取し、イヌのアレルゲンコンポーネント(Can f1~6)を分析した。

背景

■ 富裕国では、人口の5~10%がイヌアレルギーである。

■ 診断および治療は、組成と濃度が十分に明らかにされていない天然物由来のアレルゲン抽出物に基づいている。

 

目的

■ 市販の皮膚プリックテスト(skin prick test; SPT)溶液中のイヌに対する6種類のアレルゲン(Can f1~6)を定量し、イヌの個々のアレルゲンプロフィールを決定することを目的とした。

 

方法

5つのベンダーからのSPT溶液のアレルゲン含有量と、3種類の解剖学的部位からのアレルゲン源の材料を分析した。

■ 毛と唾液試料を120匹のイヌから採取した。

■ Can f1~6は,精製組換えもしくは天然アレルゲン、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体を用いた阻害ELISA法により定量した。

■ 好塩基球活性化試験によりアレルギーの誘発性を分析した。

 

結果

■ アレルゲン組成が大きく変動することが市販SPTバイアルで観察され、好塩基球活性化させる患者による能力差をもたらした。

■ 抽出物の不均一性は、個々のイヌや材料における採取部位やアレルゲン組成に依存した。

Can f2やCan f6は、毛とSPT溶液中では低いレベルを示したが、毛試料中の大きな部分を占めるアレルゲンであるCan f4は、SPT溶液中では同じような高い率を示さなかった

Can f3はSPT溶液中で最もばらつきが大きかった

 

結論

■ 天然抽出物中のイヌアレルゲンには非常にばらつきがあり、正確な診断と治療のための採集源、試料の採集、処理、最終的には標準化、最小のアレルゲン量の問題を提起している。

 

スポンサーリンク(記事は下に続きます)



 

とくに一部の吸入抗原に対する粗抗原は解釈に問題がでることがある。

■ プリックテストに限らず、粗抗原は採取における問題点が指摘されることがあります。

■ よくあるのが、例えば「ハウスダスト」です。ハウスダストの試薬は、多数の家庭から採取された材料から作られます。

■ しかし、多種多様なアレルゲンが含まれることになり、どの検査をしているのかわからなくなってしまうので、私は最近はほとんど検査項目にいれていません。

BMLのホームページより抜粋。

ハウスダストの主要成分は、ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、ゴキブリなどとされている。

■ イヌのプリックテスト溶液も、その個別のアレルゲン量にばらつきがあり、標準化が求められているといえるでしょう。

■ アレルギー学の発展が著しいとはいえ、相手になるアレルギーが多様なので、まだまだこれからの分野といえましょう。

 

今日のまとめ!

 ✅ イヌに対するプリックテスト溶液中のアレルゲン量はばらつきや、少ないアレルゲン量のコンポーネントもあるため、注意が必要である。

 

Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう