以下、論文紹介と解説です。

Dua S, et al. The effect of sleep deprivation and exercise on reaction threshold in peanut-allergic adults: a randomised controlled study. J Allergy Clin Immunol 2019. [Epub ahead of print]

ピーナッツアレルギー患者、3種類のオープンピーナッツ負荷試験にランダム化(負荷後の運動、負荷試験前の睡眠不足、介入なし)し、少なくとも2種類の負荷を行った81人(平均年齢25歳)の負荷陽性閾値を比較した。

背景

■ ピーナッツアレルギーは、重篤で致死的な反応を引き起こす。

■ 現在の食品アレルゲン表示は、反応閾値や日常要因の影響に関するデータが限られているため、アレルギー患者の食品選択を制限するという負担に対し、これらのリスクを適切に対処することができていない。

 

目的

■ 英国のピーナッツアレルギー集団に対するピーナッツ閾値用量を推定し、睡眠不足と運動の影響を調査した。

 

方法

■ クロスオーバースタディにより、ピーナッツアレルギー参加者は、ブラインド試験後に順不同に3種類のオープンピーナッツ負荷試験を受けた(各用量負荷後の運動、負荷試験前の睡眠不足、介入なし)

■ 主要評価項目は、症状(蛋白質[mg])を誘発する閾値用量だった。

■ 一次解析は、介入なしの負荷試験と各介入の差をlogによる閾値(%変化)で推定した。

■ ピーナッツアレルギー集団における誘発用量を導く用量分布をモデル化した。

 

結果

■ 試験開始時の負荷試験は被験者126人で実施され、100人はランダム化され、81人(平均年齢25歳)は少なくとももう1種類の負荷試験を完了した。

閾値の平均(SD)は、介入なしの負荷試験では214mg(330mg)であり、これは運動と睡眠不足でそれぞれ45%(95%信頼区間 21-61;p=0.001)と45%(22-62; p=0.001)低下した。

論文から引用。グラフィカルアブストラクト。ピーナッツの負荷陽性閾値は、睡眠不足や運動で4割以上低下する。

■ 1%推定誘発用量の平均(95%信頼区間)は、介入なしの負荷試験1.5mg(0.8-2.5)(n=81)、睡眠不足後 0.5mg(0.2-0.8)、運動後0.3mg(0.1-0.6)だった。

 

結論

■ 運動と睡眠不足は、ピーナッツアレルギー患者の反応閾値を有意に低下させ、反応リスクを高める。

■ これらのデータを用いて基準となる用量を調整することにより、アレルゲンに対するリスク管理やラベリングが改善され、ピーナッツアレルギー患者の保護が最適化される。

 

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普段の臨床上の疑問を、エビデンスレベルが高い方法で証明した研究。

■ TRACE研究と名付けられた研究です。

■ 日常診療でよく感じられる状況をクロスオーバー試験というエビデンスレベルが高い方法で明らかにしている点からみると、とても重要な結果です。

■ ただ、「睡眠不足」や「運動」を数値化することは難しいので、運動や睡眠不足で症状がある場合はもともと症状が誘発される閾値と負荷量が近いということもいえますので、普段から無理をしないほうがいいのかもしれません。

 

今日のまとめ!

 ✅ 睡眠不足や運動は、ピーナッツの負荷陽性になる閾値を4割以上下げる。

 

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