以下、論文紹介と解説です。

Harkins C, et al. The widespread use of topical antimicrobials enriches for resistance in Staphylococcus aureus isolated from patients with atopic dermatitis. British Journal of Dermatology 2018; 179:951-8.

アトピー性皮膚炎患児 50人と、皮膚疾患のない児49人の、鼻腔内の黄色ブドウ球菌の抗菌薬(フシジン酸)耐性や遺伝子型を比較した。

背景

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis ; AD)における症状のある皮膚における黄色ブドウ球菌の保菌率は約70%である。

■ 再燃時の疾患重症度の上昇と全体的な疾患重症度は、黄色ブドウ球菌の負荷の増加と相関する。

■ したがって、ADに対する治療は、しばしば局所および全身性の抗菌薬による黄色ブドウ球菌をターゲットにする。

 

目的

抗菌薬に対する感受性と耐性の遺伝的因子が、AD小児と健康小児の鼻腔保菌者における皮膚からのS.aureus分離株で異なるかどうかを確認する。

 

方法

■ この症例対照研究では、病院皮膚科を受診したAD児 50人から分離された黄色ブドウ球菌と、非感染性疾患で病院の救急科を受診した皮膚疾患のない小児 49人から分離された鼻腔における保菌者とを比較した。

■ 全ゲノム塩基配列決定法により、コアゲノムの変異に基づいた分離株の系統発生的フレームワークを作成し、群間で抗微生物耐性フェノタイプと遺伝子型を比較した。

 

結果

■ AD例および対照から分離された黄色ブドウ球菌に関し、分離株あたりの耐性フェノタイプの数は、平均すると同程度だった。

AD症例からの分離株の耐性パターンは異なり、フシジン酸耐性(fusidic acid resistance; FusR)はAD群において有意に高頻度だった(P=0·009)

遺伝的にFusRが識別でき、fusAの染色体変異はAD群で優勢だった(P = 0.049)

■ 解析の結果、FusRは個体内で、複数回および複数のメカニズムを介して進展することが明らかになった。

消毒剤に対する感受性低下と関係しているプラスミド由来qac遺伝子キャリアはADでは頻度が8倍高かった(P=0.016)

 

結論

■ この結果は、強い選択圧がADにおける特定の抵抗の発現と持続を引き起こすことを示唆する。

 

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アトピー性皮膚炎に対し抗菌薬を使用するかどうかの選択は、なかなか悩ましい。

■ 抗菌薬も消毒薬も効果が低くなるとなるとどうしようもないかというと、そうでもありません。

■ アトピー性皮膚炎が改善してくると常在菌が増え、黄色ブドウ球菌を減らすための抗菌ペプチドを産生するため、結局黄色ブドウ球菌を減らすことができます。

■ 実際、抗菌薬を使用せずとも、皮膚の治療をしっかりすれば抗菌薬を使用しても使用しなくても改善率に差がないというランダム化比較試験もあります。

 

今日のまとめ!

 ✅ アトピー性皮膚炎がある場合、保菌している黄色ブドウ球菌に対して抗菌薬も消毒剤も効きにくいかもしれない。

 

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