以下、論文紹介と解説です。

Dissanayake E, et al. Skin Care and Synbiotics for Prevention of Atopic Dermatitis or Food Allergy in Newborn Infants: A 2 x 2 Factorial, Randomized, Non-Treatment Controlled Trial. Int Arch Allergy Immunol 2019:1-10.

一般新生児計459人に対する保湿剤の塗布とシンバイオティクス内服が、1歳までのアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの予防に有効かを検討した。

背景

アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis; AD)食物アレルギー(food allergy ; FA)はよくある小児の疾患であり、相互に関連している、もしくは皮膚バリア破壊・消化管粘膜異常の結果である可能性がある。

■ 保湿剤やシンバイオティクスの有効性を示唆するエビデンスもあるが、これらの介入の単独もしくは併用に対する決定的なエビデンスはない。

 

目的

■ 本研究の目的は、1歳までの小児におけるADやFAの予防に対する保湿剤やシンバイオティクスの有効性を確認することだった。

 

方法

■ 出生前にリクルートされた母親からの新生児は、保湿剤、シンバイオティクスの両方の処方、もしくは両方とも処方を受けない群に分けられた。

■ 介入は生後6か月まで実施された。

■ ADやFAの発症月齢は、生後1、6、9か月、1歳時に複数のアンケートで報告された。

■ ADは生後9か月で小児科医により診断された。

 

結果

計459人の乳児が1歳でアウトカム評価の資格があった。

保湿剤もシンバイオティクスも、1歳におけるADやFAの発症を低下させる効果を示唆しなかった。

 

結論

■ この研究では、保湿剤やシンバイオティクスの単独もしくは併用が、1歳までのADやFAの発症を予防するのに十分であることを示すエビデンスをもたらさなかった。

 

スポンサーリンク(記事は下に続きます)



 

「ハイリスクの新生児」に対する保湿剤塗布を否定するものではないものの、「全員に保湿剤を塗る必要性はないかもしれない」ということを示した研究結果でしょう。

■ この結果は、先行研究を否定するものではなく「一般新生児全員に保湿剤を塗っても(予防的な効果が低い群も多く含まれることになり)、全体としては効果的にアトピー性皮膚炎の発症を予防できるとはいえない」ということを示すと言えます。

■ アトピー性皮膚炎を発症しやすい児は新生児期からバリア機能が低いことが示唆されており、「予防するべき児を鑑別する必要性がある」ことを示しているといえましょう。

■ 今後は、塗るべき対象を区別するためにはどうするかに焦点が集まってくるのではないかと思われます。

■ また、「保湿剤を塗ってはいけない」ではないことにも注意を要します。現状では効果的に区別する方法がない以上、「どちらを選ぶかの基準がない」のですから。

■ また、シンバイオティクス(=プロバイオティクス+プレバイオティクス)がアトピー性皮膚炎の発症を予防する可能性が示されていましたが、それに関しても否定的な結果でした。

2019/8/17追記。

■ そして、個人的には「予防するべき児を鑑別する方法がない」以上、「適切なスキンケア指導」を全員にすることは悪くはないだろうというのが私の考えです。保湿剤を塗ることを選択するのは次の段階の研究が行われた後だろうと思っています。

 

今日のまとめ!

 ✅「一般新生児に対する」新生児期からの保湿剤塗布やシンバイオティクスは、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症予防に働かなかった。

 

Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう