以下、論文紹介と解説です。
Werfel T, et al. Exacerbation of atopic dermatitis on grass pollen exposure in an environmental challenge chamber. J Allergy Clin Immunol 2015; 136:96-103.e9.
カモガヤ花粉に感作された成人のアトピー性皮膚炎患者をランダム化し(負荷群6名、プラセボ群11名)、花粉曝露室によるカモガヤ花粉による曝露でアトピー性皮膚炎の悪化があるかどうかを検討した。
背景
■ 感作されたアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)患者において、吸入アレルゲンに対する局所への曝露後にかゆみや皮膚病変が生じるとしばしば推測されてきた。
目的
■ 単施設による二重盲検プラセボ対照試験デザインを用いて、雑草アレルゲンに対する明らかなIgE感作のある成人のAD患者における雑草花粉に対する環境負荷室による皮膚反応を検討した。
方法
■ 被験者は、Dactylis glomerata(カモガヤ≒オーチャードグラス)花粉の4000花粉粒/m3またはきれいな空気のいずれかにより、2日間連続で負荷を受けた。
論文より引用。研究フローチャート。
■ ADの重症度は、各試験来院時に (objective) scoring of AD (SCORAD)により負荷後5日まで評価されたした。
■ さらに、Dactylis glomerataに曝露された皮膚と曝露されていない皮膚を、それぞれ局所のSCORADスコアと調査者に全体的評価を用いてスコア化した。
■ 一連の血清サイトカインおよびケモカインは、Luminexベースの免疫アッセイを用いて測定された。
■ 本研究ののプライマリエンドポイントは、負荷前値と負荷後値のobjective SCORADスコアの変化だった。
結果
■ 雑草花粉への曝露は、ADの有意な悪化を引き起こした。
論文より引用。花粉曝露でアトピー性皮膚炎の有意な悪化が認められた。
■ 衣服に覆われた皮膚領域よりもむしろ曝露された部位の顕著な湿疹の再燃が生じた。
論文より引用。露出部位の悪化。Aは負荷1日目と2日目。Bは負荷前と負荷3日後。
■ 雑草花粉に曝露された被験者においては、CCL17、CCL22、IL-4の血清中濃度の有意な上昇が観察された。
結論
■ この研究は、いわゆる外因性IgE依存性AD患者における、吸入アレルゲンへ曝露が皮膚症状の悪化を誘発することを示唆している。
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雑草花粉はあまり遠くまで飛散しないため、生活の様子も聞きながら診療する必要性がある。
■ 雑草花粉は、樹木の花粉と比較して遠くまでは飛散しないと考えられています(たとえばスギ花粉は100km以上飛散しますが、雑草花粉は2km以内)。
■ ですので、雑草花粉に関しては周囲の植生や生活も考えて診療する必要があります。
■ かといって、運動を制限することを考えるだけではなく、露出部位のスキンケアを考えながら、運動もできるように配慮した指導を考えたいものです。
今日のまとめ!
✅ Dactylis glomerata(カモガヤ≒オーチャードグラス)花粉に感作されているアトピー性皮膚炎患者は、同じ花粉の負荷で特に露出部位が悪化する。