以下、論文紹介と解説です。

Choi J, et al. Topical treatments in atopic dermatitis: unexpectedly low use of emollients; use of topical corticosteroid is higher in juvenile patients, higher in male vs females, and shows independent associations with asthma and depression. British Journal of Dermatology 2019.[Epub ahead of print]

プライマリケア844施設における45万人(31年間)のアトピー性皮膚炎患者において、ステロイド外用薬と保湿剤の使用量を12ヶ月間にわたり確認した。

背景

■ 数十年の使用にもかかわらず、実際の状況において中等症~重症のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)に使用されるステロイド外用薬(topical corticosteroids; TCS)と皮膚保湿剤の実際の使用量は知られていない。

■ このため、不適切な使用が広まっているのかどうかは依然として不明である。

 

目的

■ 中等症から重症のADにおけるTCSと皮膚保湿剤の使用を定量化する。

 

方法

■ 薬物の処方は、二重盲検により、薬物調剤時点で前向きに記録された。

プライマリケア844施設における31年間45万人という集団ベースのコホートは、疾患コントロールの失敗により特徴付けられた。

■ 各患者において、変動を最小限にするために、処方を12か月にわたって記録した。

 

結果

■ 得られたデータセットはほぼ完全であり、報告バイアスや記録バイアスは基本的には認められなかった。

■ アレルギーの併存疾患は、予測された頻度に一致した。

TCS使用量の中央値は、成人患者 vs 若年者(16歳未満)(49.2 vs 38.1g/月)、男性vs 女性(46.8 vs 29.7g/月)、喘息の治療も受けている患者(40.4 vs 26.7g/月)で統計的に有意に多かった

■ TCS使用量は抗うつ薬治療と強く関連していた。

皮膚保湿剤の使用量は予想外に少なく、中央値は9.6g/日(範囲1.4-30.1g/日)だった

■ 結果は、独立した検証コホートで再現された。

 

結論

皮膚保湿剤の使用不足がAD重症度に寄与する因子である可能性がある。

■ TCSの使用は現在のガイドラインの量を超えていない。

■ 外用治療の正確な定量化は、新しいAD治療の実際の治療への影響を測定するための広く利用可能な戦略を提供する。

 

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保湿剤の使用が必要とわかっていても、現実にはなかなか実施は難しいものです。

■ 行動科学的に考えると、「悪化した場合⇒ステロイド外用薬を塗る⇒改善する」という方向になりますので、「改善する」という好子(強化子)が働くことでステロイド外用薬は塗って頂けることが多いです。

■ 一方、「皮膚がきれい⇒保湿剤を塗る⇒皮膚がきれい」の方向だと、好子として働きにくく、行動が弱くなりがちなのですね。

■ ですので外来では、「頑張ってくださってありがとうございます。お陰でステロイド外用薬を減らしていくことが出来ます。お母さん(お父さん)のお陰です」と伝える様にしています。

■ これは本心からでもありますし、ご両親や本人が頑張ったスキンケアに対する、いくばくかの好子になれば良いなあと思っています。

■ ステロイド外用薬は、「必ず、減らす止めるが目標です」と繰り返しお話ししている、この目標は、ご家族の御協力がなければ出来ないのです。

■ 現実には、なかなか実施困難だとしても、私からだけでも好子になって、目標に達することが出来ればと思っています。

 

今日のまとめ!

 ✅ 保湿剤の使用はアトピー性皮膚炎に対し重要でも、現実的には予想外に使用量が少ないようだ。

 

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