以下、論文紹介と解説です。
Hew M, et al. The 2016 Melbourne thunderstorm asthma epidemic: risk factors for severe attacks requiring hospital admission. Allergy 2019; 74:122-30.
2016年11月21日にオーストラリアのメルボルンを襲った雷雨喘息の集団発生のリスク因子を検討した。
背景
■ 2016年11月21日、世界で最も壊滅的・致命的な雷雨喘息の流行がオーストラリアのメルボルンを襲った。
目的
■ 緊急治療室(emergency room; ER)に来院した雷雨の影響を受けた患者において、入院を必要とする重症の喘息発作を予測する危険因子を検討した。
方法
■ 雷雨喘息になった患者を、8つの主要なメルボルン保健サービスのER記録から特定し、電話によるインタビューを実施し、入院の危険因子を分析した。
結果
■ 雷雨喘息患者 2248中1435人(64%)にインタビューし、そのうち164人(11.4%)が入院を必要としていた。
■ 全体として、鼻炎は87%に、現在の喘息は28%にあった。
■ 入院のオッズは年齢が高くなるにつれて高くなり(オッズ比 1.01; 95% CI 1.002~1.019)、現在喘息があるひとが高値だった(調整オッズ比 [odds ratio; OR] 1.87; 95% CI 1.26~2.78)。
■ 過去12か月間の喘息のための入院の既往は、入院するオッズをさらに増加させた(aOR 3.16; 95% CI 1.63~6.12)。
■ アジア系の患者では、入院のオッズは非アジア系の患者(aOR 0.59; 95% CI 0.38~0.94)より低かったが、オーストラリアで生まれたアジア系の患者では高かった(OR=5.42; 95% CI 1.56~18.83)。
結論
■ ERを受診した雷雨喘息患者の流行において、喘息の既往のある患者における入院のオッズが高く、さらに最近の喘息による入院でさらに増幅され、不十分な疾患コントロールによってもたらされるもろさが強調された。
■ 入院のオッズは、非アジア系患者よりも海外で生まれたアジア系患者で低かったが、オーストラリアで生まれたアジア系患者では高かった; これらの観察は、重症の雷雨喘息に対する感受性が遺伝子‐環境相互作用により増強されることを示唆する。
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雷雨喘息で大きな発作を起こすことを予防するためには、普段の喘息コントロールも重要だろう。
■ 雷雨喘息の悪化因子は、「喘息のコントロール不良」そのものとも言えるでしょう。
■ 積極的な特異的治療として花粉に対する免疫療法は有効なようですが(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2018; 198:126-8.)、残念ながら日本ではダニとスギしかありませんから、抗炎症治療を十分にしていくしかありませんね、、
今日のまとめ!
✅ 雷雨喘息は、年齢が高いほど、喘息が現在あるひとのほうが、過去1年以内の発作があるほうが、おこる可能性が高いようだ。