以下、論文紹介と解説です。

Eigenmann PA, et al. Are avoidance diets still warranted in children with atopic dermatitis? Pediatric Allergy and Immunology 2019.[Epub ahead of print]

アトピー性皮膚炎と食物アレルギー、除去食の取り扱いに関してレビューした。

■ 中等症から重症のアトピー性皮膚炎( atopic dermatitis ;AD)の小児において、ほぼ40%はIgE依存性食物アレルギー(food allergy; FA)がある。

■ この臨床的な知見は、FAとADにおける皮膚炎症が関連するという実験的なデータや、食物負荷によりADが再燃したり除去食に改善するという報告により広く知られている。

■ しかし、食物除去はADを改善する可能性があるにも関わらず、除去食はADを治癒させず、アナフィラキシー反応を含む即時型アレルギーの発症のような有害な効果がある可能性があり、患者と家族の生活の質も有意に低下させる可能性がある。

■ ADの治療は食物除去よりもむしろ、最適な医学的治療に焦点を当てるべきである。

■ 食物アレルギーに対する検査は、主に即時型アレルギー反応が懸念される場合に適応となる。

■ 難治性ADにおいては、食物が慢性的な原因となっている可能性があると考えられる場合に限られた食物の検査することはある。

■ 除去食は、適切な診断的食物負荷試験によって食物アレルギーであることが明らかに同定された患者、そして除去食の限られた有益性と起こりうる有害性を家族に十分に知らせた後にのみ適応となる。

 

※本文中の要約ステートメントを以下に示します。

要約ステートメント
・ADの小児の一部では、食物がADを悪化させるかもしれないというエビデンスがある。
・中等症から重症のAD患者の約40%は食物アレルギーを有する。
・そしてその一部のみがこれらの食物を原因としたADの紅斑があり、他は即時型アナフィラキシー反応がある。
・診断評価では両方の問題を考慮しなければならない
・最近の予防や治療に対する研究はアレルゲンの摂取を推奨しており、ほとんどの場合、ADの増加とは関連していなかった。
・この知見は、厳格な食物除去によりADの治療を行うことに対する熱意を低下させた。
・食物除去は、栄養学的な生活の質の低下と免疫的な影響(即時型反応の発症)をもたらす可能性があり、共有された意思に関する議論をし考慮されなければならない。
・皮膚治療は、第一選択のアプローチとして推奨されるべきであり、難治例では食物摂取による誘因を考慮すべきである。
・ADにおける食物アレルギー検査は、湿疹症状においては有用性が限られているが、検査が陰性であれば疑いを取り除くのに役立つことがある。
・食物除去の対象となっている場合には、除去は短期間にとどめ、除去により改善する可能性があると考えられた場合には、関係を証明するために経口食物負荷試験を実施すべきである。
・研究は不足しているものの、誘因となりうる食物のを除去するよりも、むしろ少なくするという理論的エビデンスを考慮してよいだろう。

 

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アトピー性皮膚炎における除去食を考える参考になる優れたレビューです。

■ アトピー性皮膚炎において、除去食が間違っているというわけではなく、『十分吟味して』選択しなければならないということです。そして、食物負荷試験はリスクもマンパワーも必要であり、簡単にたくさん行える検査ではありません。

■ 中等症のアトピー性皮膚炎があり11歳から乳の除去を開始したところ、(いままで摂取できていた)乳で症状が出現するようになり、18歳で誤食により不幸な転帰をとったお子さんの報告もあります(Barbi E, Gerarduzzi T, Longo G, Ventura A. Fatal allergy as a possible consequence of long-term elimination diet. Allergy 2004; 59:668-9.)。無制限な除去を戒めるべきでしょう。

■ ですので、まずは『皮膚の治療を十分行ってから』、除去食は慎重に考えていく必要があります。

 

今日のまとめ!

 ✅ アトピー性皮膚炎の症状そのものに関連する食物アレルギーは少数であり、除去食は慎重に行われるべきである。

 

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