以下、論文紹介と解説です。
Claeys C, et al. Prevention of vaccine-matched and mismatched influenza in children aged 6–35 months: a multinational randomised trial across five influenza seasons. The Lancet Child & Adolescent Health 2018; 2:338-49.
生後6~35か月の小児12018人に対する不活化四価インフルエンザワクチン(IIV4)の有効性をランダム化比較試験(IIV4群 6006例と対照群6012例)で評価した。
背景
■ 5歳未満の小児へのワクチン接種の重要性にもかかわらず、この年齢層におけるインフルエンザのワクチン予防を評価した研究はほとんど報告されていなかった。
■ 生後6~35か月の小児における不活化四価インフルエンザワクチン(inactivated quadrivalent influenza vaccine;IIV4)の有効性を評価した。
方法
■ この第3フェーズ多国籍観察者盲検化試験では、欧州、中米、アジアの13カ国から参加した健康小児を、五つの独立したコホート(インフルエンザシーズンが異なる)として集めた。
■ 参加者は無作為(1:1)にIIV4 (赤血球凝集素抗原15μg/0.5mL) またはインフルエンザでない対照ワクチンに割り付けられた(前にワクチン接種を受けている児には0日目に1回のみ、前にワクチン接種を受けていない小児には0日目と28日目に二回、またはインフルエンザでない対照ワクチンの一回のみもしくは二回)。
■ 主要評価項目は、鼻スワブ検査でRT‐PCRにより確認された中等症~重症のインフルエンザまたは(重症度に関わりのなく)全てのインフルエンザの罹患だった。
■ 培養分離株に関してはさらに、ワクチン株と抗原的に一致するか、もしくは一致しないという特性を確認した。
■ 有効性は、接種方法ごとのコホート群、そしてワクチン接種全コホート群を、time-to-event解析で評価し、安全性はワクチンを接種した全コホート群で評価した。
評価結果
■ 2011年10月1日~2014年12月31日に、全ワクチン接種コホート群として12018人(IIV4群 6006例と対照群6012例)をリクルートした。
■ IIV4群の356人(6%)と、対照群の693人(12%)は、少なくとも1回のRT‐PCRで確認されたインフルエンザに罹患した。
■ インフルエンザ1049株のうち、138株(13%)はA/H1N1、529株(50%)はA/H3N2、69株(7%)はB/Victoria、316株(30%)はB/山形だった。
■ 抗原性を特徴づけることができた848分離株のうち、539(64%)がワクチン不一致だった(A/H1N1 105株中16株[15%]; A/H3N2 378株中368株[97%]; B/Victoria 63株中54株[86%]、B/山形 302株中101株[33%])。
■ ワクチン有効性は、接種方法ごとのコホート群においては、中等症~重症のインフルエンザにおいては63%(97.5% CI 52-72)、すべてのインフルエンザに対して50%(42~57)であり、ワクチン接種した全コホート群では、中等症~重症のインフルエンザにおいては64%(53-73)、すべてのインフルエンザに対して50%(42~57)だった。
■ IIV4と対照に臨床的な安全性の差はなかった。
解釈
■ IIV4は、ワクチン不一致が大きかったにもかかわらず、生後6~35か月の小児におけるインフルエンザA/Bを予防した。
■ ワクチンの有効性は中等症~重症のインフルエンザに対して最も高く、これは最大の負担と関連する最も臨床的に重要なエンドポイントである。
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なかなか見ない、インフルエンザワクチンの有効性をみた大規模なランダム化比較試験。
■ 本文が入手できなくて、アブストラクトのみですが、なかなかみないような大規模なランダム化比較試験です。
■ バングラデシュの6~23ヶ月の子ども達4081人に対するランダム化比較試験も最近報告されていますが、それを上回ります。
■ 乳幼児に対するインフルエンザワクチンの有用性は、おおむね確定でいいのではないかな、、と思っています。
■ なお、この集団を用いた二次解析も行われていましたので、後日ご紹介しようと思っています。
今日のまとめ!
✅ 3歳未満の小児に対する4価インフルエンザワクチンの有用性は、12018人という大規模なランダム化比較試験で、とくに重症化をへらす効果として現れいわゆる型が不一致でも有効性はあるといえそうだ。