以下、論文紹介と解説です。

Lyons SA, et al. Dietary Interventions in Pollen-Related Food Allergy. Nutrients 2018; 10.

花粉食物アレルギー症候群に対し、1) 食事除去のアドバイス、2) 経口免疫療法(OIT)、3) (熱)処理、4) 低アレルゲン品種の摂取を検討した報告に関してシステマティックレビューを実施した。

背景

■ 実際問題として、花粉関連食物アレルギー(pollen-related food allergy;PRFA)における最良の食事アプローチが何であるかは不明のままである。

 

目的

■ 著者らの目的は、1) 食事除去のアドバイス、2) 経口免疫療法( oral immunotherapy; OIT)、3) (熱)処理、4) 低アレルゲン品種の摂取が、花粉関連食物アレルギー反応の頻度、重症度、誘発用量に及ぼす影響を評価することだった。

 

方法

■ PubMed、Embase、Cochraneにおけるシステマティックレビューを実施した。

論文から引用。研究フローチャート。

 

結果

■ 成人のPRFAにおける4つの介入のうちの1つのin vivoにおける研究を実施したすべての研究が含まれた。

■ 各試験の質と妥当性を評価され、アレルギー反応の頻度、重症度、誘発用量に関する利用可能なデータを抽出した。

10研究が適格基準に合致した

■ 食物除去の助言に関する研究はみつからなかった。

リンゴOITに関する2研究(92人)は、耐性が63%/81%で誘導されることを報告した。

■ 4研究(116人)は、熱処理に焦点をあてた。

加熱は、ヘーゼルナッツアレルギー患者の15~71%、セロリアレルギー患者の46%において症状を無くすことが判明した。

低アレルギー性と高アレルギー性のリンゴ品種を比較した4研究(60人)は、サンタナ種(おそらくエリーゼ種も)がゴールデンデリシャスよりも反応が軽いことを明らかにした

 

結論

■ 全体的なエビデンスレベルが低いことを認識しつつ、OIT、熱処理、低アレルゲン性の品種は、PRFAの一部の患者においてアレルギー反応を低下または完全に阻止する可能性があると結論した。

 

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PFASに対し、経口免疫療法は有効である可能性はある。しかし、実施するかどうかは超えなければならないハードルも多そうだ。

■ この報告をもって、PFASに対して『たべたほうがよい』とするのは早計でしょう。

■ というのも、引用された論文の質はすべて『とても低い』に分類されており、まだ結論できる段階とはいえないことも挙げられます。

 

論文から引用。研究の質を評価したGRADE分類。

■ さらに、論文にも下記の様に記載があります。

Although no evaluation of sustained unresponsiveness was performed for OIT with apple in the studies included in this review, Kopac et al. also suggest that tolerance may be transient, because no significant immunologic changes were observed and one subject experienced a relapse after discontinuing apple consumption during a holiday [22]. Therefore, OIT with apple in subjects with pollen-related apple allergy may be effective, but regular consumption after completion of the study is likely necessary to maintain tolerance(このレビューに含まれている研究では、リンゴOITに対する”sustained unresponsiveness(SU)”の評価は行われていないが、Kopacらは、有意な免疫学的変化は観察されず、ある被験者が休暇中にリンゴの摂取を中止した後に再発したことから、耐性が一過性である可能性を示している。したがって、花粉に関連したリンゴアレルギー患者におけるリンゴOITは、有効であるものの耐性を維持するためには試験終了後も定期的な摂取が必要である可能性が高い)。

■ すなわち、果物に対する経口免疫療法は、実施ができたとしても『継続しなければ失われてしまう可能性が高そう』ということです。

■ 現状では、食物経口免疫療法は研究段階といえ、PFASに対する経口免疫療法も同様です。

■ しかも、たとえば卵であれば定期的な摂取は許容範囲でも、リンゴはそうともいえないでしょう。ですので、まだ『有効で、実施した方がいいとはいえない』と考えられます

■ ただし、『シラカバ花粉アレルギーがあり、すでにリンゴのアレルギーのある場合に、現在食べられている果物を除去する必要性はない、もしくは推奨できない』とはいえるでしょう。

■ そして、熱処理に関しても、この論文のヘーゼルナッツに対する加熱がアレルゲン性を下げたことに関し、一般的なナッツアレルギーに対しアレルゲン性を下げるわけではないことにも注意を要します。

■ ただ、品種によってアレルゲン性が異なる可能性は、実臨床でも感じていたので、勉強になりました。

 

今日のまとめ!

 ✅ PFASに対する経口免疫療法は有効かもしれない。しかし、問題点も多く残されている。

 

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