以下、論文紹介と解説です。
Suaini NHA, et al. Genetic determinants of paediatric food allergy: A systematic review. Allergy 2019; 74:1631-48.
食物アレルギーの遺伝的要因に関する32文献を系統的にレビューした。
背景
■ 食物アレルギーの遺伝的決定因子はシステマティックレビューが実施されていない。
■ したがって、食物アレルギーの遺伝的要因に関する文献を系統的にレビューし、更なる研究のための領域を確認した。
方法
■ 2018年1月9日に3種類の電子データベース(MEDLINE、EMBASE、PubMed)を検索した。
■ 二人の著者が検索した論文を選択基準に従ってスクリーニングし、研究の特徴と関連性の程度に関する関連した情報を抽出した。
■ 適格な研究には、非罹患非アトピー性対照群を報告し、遺伝情報を有し、小児において実施された研究が含まれた。
結果
■ 検索した2088報告のうち、32報告が選択基準を満たした。
■ 5件はゲノムワイド関連研究であり、残りは候補遺伝子に関する研究だった。
■ 研究のうち22報告は主に白人集団で実施され、残りの10報告はアジアの集団または不特定の民族に対するものだった。
■ 食物アレルギーと関連する変異(SPINK5、SERPINB、C11orf30)と同様、FLG、HLA、IL10、IL13に対するエビデンスを見出した。
結論
■ 食物アレルギーにおける遺伝子研究は少ないが、FLG、HLA、IL13は食物アレルギーとの関連について最も再現可能な遺伝子である。
■ 将来性のある結果ではあるものの、食物アレルギーに関する既存の遺伝子研究はサンプルサイズが不十分で複数の調整が欠けており問題が多い。
■ 再現解析や集団の構造化測定を含むものはほとんどなかった。
■ したがって、同定された遺伝子の作用機序を解明するためには、これらの限界に対処する研究と機能研究が必要である。
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皮膚バリアやアレルギー性の炎症を来しやすい遺伝的体質はあるといえるかもしれない。しかし、ターゲットがはっきりしているなら、事前の対応も可能かもしれない。
■ SPINK5は、ネザートン症候群 (先天性魚鱗癬、アトピー性皮膚炎、毛髪の異常などを併発する疾患)の原因遺伝子であり、フィラグリン同様、皮膚バリアに関連する遺伝子です。
■ そしてIL-13は、アレルギー性の炎症に関連するサイトカインです。
■ 結局、皮膚バリア機能の問題と、アレルギー性の炎症を悪化させる体質が強い場合に、食物アレルギーの発症リスクになるのではという結果と読めそうです。
■ すなわち、糖尿病やがんになりやすい家系があるように、アレルギーになりやすい家系もあるといえるでしょう。
■ しかし一方で、運動や食事に十分気をつけておくことで糖尿病になりにくくなるように、アレルギーも皮膚バリアの保護やはやめにアレルギー性の炎症をおさえることで、家系的なハンデをおさえる可能性があるということでもあるのではないかと私は考えています。
今日のまとめ!
✅ 食物アレルギーの遺伝的な変異に関し、SPINK5、SERPINB、C11orf30、FLG、HLA、IL10、IL13に対するエビデンスがあった。