以下、論文紹介と解説です。

Xiong L, et al. The Efficacy and Safety of Epicutaneous Immunotherapy for Allergic Diseases: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int Arch Allergy Immunol 2019:1-13.

経皮免疫療法(EPIT)を検討したランダム化比較試験10試験に対し、効果と安全性に関するメタアナリシスを実施した。

目的

■ アレルギー性疾患に対する経皮免疫療法(epicutaneous immunotherapy; EPIT) の効果と安全性を系統的にレビューする。

 

方法

■ アレルゲンにより誘発されるアレルギー反応についてEPITと非EPITを比較した無作為化比較試験(randomized controlled trials; RCTs)を、言語制限をせずに2019年7月29日までの国際試験登録(PubMed、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、China National Knowledge Infrastructure、CQ VIP Database、Wanfang Data)を検索した。

■ さらに、GRADEアプローチによりエビデンスの確実性を評価した。

 

結果

■ ピーナッツ、牛乳、雑草花粉アレルギーについて、EPITとプラセボを比較した1,085人の参加者(10ヶ月~65歳)を含むRCT 10試験が適格基準を満たした。

EPIT群における脱感作の重要な利点があり、ピーナッツや牛乳アレルギーでより可能性が高かった(risk ratio [RR] 2.34, 95% CI 1.69-3.23; I2 = 0%; 確実性が高いエビデンス)

EPITは局所における治療に関連した有害事象(local-treatment-related adverse events; L-TRAE)を増加させた( RR 1.56, 95% CI 1.03-2.36; I2 = 82%; 確実性が中等度のエビデンス)

■ しかし、EPIT群ではTRAE(treatment-related adverse events; 確実性の低いエビデンス)または全身性のTRAE(systemic-TRAE; s-TRAE; 確実性が非常に低いエビデンス)の有意なリスク増加は認めなかった。

EPIT群における重篤な有害事象の発生率、レスキュー薬の使用、皮膚や粘膜、眼や上気道、下気道、消化管を含む臓器系により層別化されたアナフィラキシー反応は、プラセボ群と同等だった。

■ サブグループ解析では、EPITによる脱感作は、ピーナッツアレルギー (RR 2.29,95% CI1.64-3.21;I2=0%)と12歳未満の小児 (RR 2.85,95% CI1.92-4.24;I2=0%)に有意に効果的であり、確実性の高いエビデンスが得られた。

■ 経皮的花粉免疫療法のみがs-TRAEのリスクを有意に増加させた(RR 4.65,95% CI1.10-19.64;I2=0%)。

 

結論

■ このシステマティックレビューは、EPITがピーナッツアレルギーにおける脱感作や局所のAEのリスク増加を誘導する可能性を示唆する。

■ これらの知見は、試験が限られていることと不均一性のため、慎重に解釈すべきである。

■ そして、より年長の(12歳以上の小児および成人)や他のアレルギー疾患のデータが必要である。

 

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経皮免疫療法は食物アレルギーの脱感作に有効ではあるものの、限界があるようだ。

■ 経皮免疫療法は、現状では研究段階ではあるものの、海外では実用化に向けてアレルゲンによってはフェーズIIIまで進んできている治療方法です。

■ 安全性の面からも重要な治療ルートといえそうです。

■ ただし、12歳以上では有効性が不十分だったり、食べられる閾値があがっても、食べられるまでにはなかなか効果がでなかったりといった限界もあるといえそうです。

■ これは、先行研究でも言及された内容であり、今後の対策が必要となってきそうです。

■ また、食物アレルギー以外、たとえばイネ科花粉に対するEPITの報告もあり(Allergy 2015; 70:707-10.)、こちらに関しては角質層の痛み具合では全身症状も起こり得るようです。ですので、あくまで『安定した皮膚』に使用するべき治療法とも言えるでしょう。

 

今日のまとめ!

 ✅ 経皮免疫療法は、ピーナッツや牛乳アレルギーでの有効性が確認できてきており、安全性の面でも有用である。ただし、その限界も指摘されている。

 

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