以下、論文紹介と解説です。
Pajno GB, et al. EAACI Guidelines on allergen immunotherapy: IgE‐mediated food allergy. Allergy 2018; 73:799-815.
欧州アレルギー臨床免疫学会( EAACI)のタスクフォースによって作成された、食物アレルギーのアレルゲン免疫療法のガイドライン。
■ 食物アレルギーは、無視できない罹患率、QOLの障害、医療費につながっている。
■ したがって、その治療のための新規戦略、特に経口免疫療法(oral mmunotherapy; OIT)、舌下免疫療法(sublingual immunotherappy; SLIT)、経皮免疫療法(epicutaneous mmunotherapy; EPIT)の経路による食物アレルゲン免疫療法(food allergen immunotherapy; FA-AIT)に関心があつまっている。
■ IgE依存性食物アレルギーに対するアレルゲン免疫療法に関する欧州アレルギー臨床免疫学会( European Academy of Allergy and Clinical Immunology; EAACI)タスクフォースにより作成されたこのガイドラインは、FA‐AITによるIgE依存性食物アレルギーの積極的治療に対するエビデンスに基づく推奨を提供することを目的としている。
■ 免疫療法は、治療に反応させ閾値を増加させ(脱感作としても知られる)、最終的には中止後も有効であることを達成するために、あるアレルゲンの用量を徐々に増加させる送達方法に依存する(耐性もしくはsustained unresponsivenessとしても知られる)。
■ 経口FA‐AIT、すなわち、アレルゲンを即座に飲み込む経口免疫療法(OIT)、舌の下にしばらく置く舌下免疫療法(SLIT)は最もよく評価されている。
■ 全体として、OITまたはSLITのいずれかを受けている患者、特に牛乳、鶏卵、ピーナッツアレルギーに対する治療中の有効性に関しては、かなりの有益性があることが試験により明らかにされている。
■ 中止後の有益性も示唆されているものの確認されていない。
■ FA‐AIT中の有害事象はしばしば報告されている。
レビュー中の表8から引用。FA-AITの禁忌事項(翻訳は管理人)。
■ しかし、大多数の被験者は結果としてFA‐AITを中止することはほとんどない。
■ 現在のエビデンスを考慮すると、FA‐AITは、FA‐AITの経験が豊富な研究センターまたは臨床施設でのみ実施すべきである。
■ 患者とその家族は、IgE依存性食物アレルギーに対するFA-AITの実施に関する情報を提供され、治療について十分な情報に基づいた決定を行えるようにする必要がある。
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食物経口免疫療法は、『少しずつ食べるように』という話だけでは終わらない、条件の厳しいリスクのある治療といえるでしょう。
■ 現状では、食物経口免疫療法は標準療法として推奨される方法ではありません。
■ 禁忌事項に関して簡単に翻訳して記載しましたが、『アドヒアランス不良』が筆頭に挙げられていることからも、『適当な治療』は『”絶対的”禁忌』といえます。
■ 食物アレルギーに対する積極的治療のためには、その前に喘息治療やアトピー性皮膚炎の治療もしっかり行い、安定させる必要もあるでしょう。
■ たとえば、牛乳経口免疫療法を行うにあたり、皮膚が安定せずに開始するとアナフィラキシーのリスクは10倍になるという報告もあります。
■ そして、好酸球性食道炎などにも気を配りつつ、丁寧に進める必要があります。
■ ですので当ブログでも、食物経口免疫療法の報告を共有はしてはいますが、決して自己判断で開始することは勧めていませんし、リスクが厳然とあると考えています。
■ たとえば、ピーナッツ経口免疫療法を評価した12試験 (1041人;年齢中央値 8.7歳)のメタアナリシスでは、増量中および維持中のアナフィラキシーのリスクは 3.12倍 (95%信頼区間 1.76-5.55)、アナフィラキシー発症頻度は 2.72倍 (1.57-4.72)、エピネフリン使用リスクは2.21倍と推定されています。
■ 『すこしずつ食べましょう』と簡単にはとてもいえません。その前にすべきことが多く横たわっており、単純な治療ではないと考えているからです。
■ ですので、もし食物アレルギーに関してご心配な場合は、是非専門医に受診され相談されることをおすすめいたします。
■ 医師にご相談される場合は、下記のインスタなどで調べるとより良いかもしれません。
今日のまとめ!
✅ 欧州における、食物免疫療法のガイドラインの情報を共有した。