以下、論文紹介と解説です。
Reier-Nilsen T, et al. Feasibility of desensitizing children highly allergic to peanut by high-dose oral immunotherapy. 2019; 74:337-48.
ハイリスクのピーナッツアレルギー患者57人を、ピーナツ蛋白質最大維持量5000mgもしくはより少ない個々の維持量まで増量を伴う経口免疫療法群、そして観察群20人にランダム化し、維持量に達しないリスクを検討した。
背景
■ ピーナッツに重度のアレルギーのある小児における高用量経口免疫療法(oral immunotherapy ; OIT)の実現可能性、有効性、安全性に関するデータは限られている。
目的
■ ピーナツに重度のアレルギーのある児では、OITの増量によりピーナツ蛋白質5000mgの最大維持量(maximum maintenance dose; MMD)、もしくはより少ない個々の維持量(individual maintenance dose; IMD)に到達する可能性を決めることを主に目的とした。
■ 第二に、有害事象(adverse events; AEs)を特定し、維持用量に達することに関連する因子を決めることを目的とした。
方法
■ TAKE-AWAY peanut OIT試験には、ピーナッツ経口負荷試験陽性の5~15歳の小児77人が登録された。
■ 57人の参加者を、MMDもしくはIMDに達するまで隔週の増量を伴うOIT群に、そして観察群20人にランダム化した。
■ 人口統計・生物的特性、AE、投薬、プロトコルの逸脱に関し、維持用量に達することとの関連にを調査した。
結果
■ 全ての小児は、試験開始時の負荷試験時に、少なくとも2種類の臓器における客観的症状と定義されたアナフィラキシーを示した。
■ MMDに達したのは21.1%であったのに対し、54.4%がIMDに達したのはピーナッツ蛋白質の中央値2700mg(最小値250mg/最大値4000mg)であり、24.5%はOITを中断した。
■ 増量中に、19.4%がアナフィラキシーを経験した。
■ MMDに到達しなかったのは、ピーナッツに対する嫌悪(66.7%)、受け入れがたいAE(26.7%)、社会的理由(6.7%)に起因した。
■ ピーナッツ特異的IgG4/特異的IgE比 (OR 1.02; 95%信頼区間1.0~1.04)高値は、MMDへの到達と関連した。
結論
■ ピーナッツに対しアナフィラキシーのある児の75.5%が、維持量のピーナッツ蛋白量0.25~5gに達したが、MMDに達したのは21.1%に過ぎなかった。
■ ピーナッツに対する嫌悪とAE(アナフィラキシーのハイリスクを含む)を区別し、MMDに到達する可能性は限られていた。
■ アナフィラキシーのハイリスクを含むピーナッツとAEに対する嫌悪は、MMDに到達する可能性を制限した。
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経口免疫療法において、『嫌悪感』が治療の阻害理由になりうる。
■ 重症のピーナッツアレルギーに対する治療という理由もあるでしょう。
■ しかし、『食物経口免疫療法』は、それまで食べていないものを食べる治療でもあります。どうしても苦手なお子さんがでてきておかしくありませんし、実際に多く経験します。
■ 目標まで達するまで増量ができなくても、一定量でリスクを減らすところまで増量できればその時点で維持して無理をしないという考え方もあっていいのではないかと思います。
今日のまとめ!
✅ ハイリスクのピーナッツアレルギーに対し、ピーナッツ蛋白量5000mgまで増量するための阻害因子に、ピーナッツに対する嫌悪(66.7%)、受け入れがたい有害事象(26.7%)、社会的理由(6.7%)があった。