以下、論文紹介と解説です。

Sano A, et al. Two cases of occupational contact urticaria caused by percutaneous sensitization to parvalbumin. Case reports in dermatology 2015; 7:227-32.

アトピー性皮膚炎のある25歳男性と18歳女性に発症した魚アレルギーに関し、その原因を検討した。

背景

■ 近年、食物アレルギー発症の主な機序として、経皮感作が提唱されている。

■ 日本では2010年以降、加水分解小麦を含有した石鹸を使用していた人における加水分解小麦蛋白質による即時型小麦アレルギーの数が劇的に増加した。

■ この発生頻度は、食物アレルゲンが経皮感作を介して生じるという仮説を支持している。

 

臨床サマリー

アトピー性皮膚炎のある25歳男性(症例1)と、18歳女性(症例2)が、食物アレルギーと手湿疹のために著者らの科を受診した。

魚を扱う仕事を始めてから、手にひどいかゆみのある湿疹が出現した。

■ その後、魚を摂取した後に口腔アレルギー症状、口腔内のかゆみ、呼吸困難を出現し始めた。

■ 特異的IgE抗体は多くの魚で検出され、皮膚プリックテストも両症例で様々な魚で陽性反応を示した。

■ さらに、マイクロアレイ・イムノアッセイ解析による種々の魚からのパルブアルブミン特異的IgE抗体は陽性反応を示した。

■ この2症例を、魚を扱う仕事に関連した接触を介したパルブアルブミンへの経皮的感作に起因する接触じん麻疹と診断した。

 

結論

■ 患者の病歴と所見は、パルブアルブミンへの職業的な曝露による経皮的感作と食物アレルギーを誘導した可能性を示している。

 

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手湿疹と繰り返しの食物への曝露は、その食物へのアレルギーを発症するリスクになる。

■ 成人における魚アレルギーは少なくないのですが、理由は十分わかっているわけではありません。

■ 以前、アレルギー学会のシンポジウムで、今回の報告のような経皮感作にあわせて『魚の消費量がさがっていること』も理由ではないかという解説を聞きました。

水産物消費の状況(水産庁)

■ すなわち、『経口免疫寛容維持できなくなってきている』という側面もあるということですね。

■ 経皮感作と経口免疫寛容の面からは、さまざまな食物を食べておいたほうがいいのかもしれません。

 

今日のまとめ!

 ✅ 手湿疹があったうえで、職業的に食物をあつかっていると、その食物に対するアレルギーを発症するかもしれない。

 

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