以下、論文紹介と解説です。
Takeo N, et al. Cochineal dye-induced immediate allergy: review of Japanese cases and proposed new diagnostic chart. Allergology International 2018; 67:496-505.
コチニール色素により誘発された即時型アレルギーの日本人報告例をレビューした。
背景
■ コチニールは、食品、飲料、化粧品、医薬部外品、医薬品の赤色色素として世界中で使用されている。
■ 赤色の主成分はカルミン酸(carminic acid; CA)である。
■ カルミンは、CAをアルミニウムもしくはカルシウムでキレート化した物質である。
■ CAおよびカルミンは通常、主要アレルゲンと考えられる38kDaの蛋白質を含むコンタミネーションした蛋白質を含む。
■ 重症のアレルギー反応はアナフィラキシーを呈する。
■ 本研究の目的は、すべての日本人報告症例をレビューし、有用な診断のためのチャートを提案することであった。
論文から引用。最近、日本からのコチニールアレルギーの報告が増えている。
方法
■ コチニール色素により誘発された即時型アレルギーの日本人報告例をレビューし、新たに登録された症例を、コチニール抽出物(cochineal extract; CE)による皮膚プリックテスト(skin prick test ;SPT)、CE測定、カルミン特異的血清IgE検査により検討した。
■ 患者血清を用いた二次元(2D)ウェスタンブロット法により抗原を同定した。
結果
■ 22例の日本人症例が報告されていた。
■ SPTと特異的IgE抗体価は、6症例がコチニール色素アレルギーとして新たに登録されるべきであることを示した。
■ 全例が成人女性であり、3例を除く全例がアナフィラキシーだった。
■ 化粧品の使用による皮膚症状の既往は13例だった。
■ 日本製のイチゴジュースと魚肉ソーセージ、欧州製の加工食品(特にフランス製のマカロン)と飲料が最近の主要アレルゲンだった。
■ 2Dウエスタンブロット法により、患者のIgE抗体は、38kDaの蛋白質や他の蛋白質に反応することを示された。
■ 健常対照からの血清もこれらの蛋白質とわずかに反応した。
結論
■ コチニール色素アレルギーの診断には、CEによるSPTとCE測定、カルミン特異的IgE検査が有用な方法である。
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日本では、化粧品へのコチニールの使用は減っているものの、海外製品には注意を要するかもしれない。
■ ここでは『女性のみ』になっていますが、小児に対し行ったアトピーパッチテスト(日本ではあまりおこなわれません)で、食品添加物で陽性になった場合に多い成分だったという報告があります(Pediatric dermatology 2015; 32:684-9.)。
■ ですので、必ずしも女性のみに限定された話ではなさそうですが、感作ルートとしては口紅などによる経皮感作が想定されていますので、今回のような結果となったのだろうと思われます。
■ なお最近は、消費者庁からも注意喚起がでたことから、日本ではコチニールを化粧品には使わなくなってきているようです。ただ、海外製品などはまだ注意を要するかもしれません。
今日のまとめ!
✅ コチニール色素によるアナフィラキシーは、日本では成人女性に多く、イチゴジュース、魚肉ソーセージ、マカロン(特にフランス製)や飲料が原因になることが多いようだ。