以下、論文紹介と解説です。
Romano A, et al. Cross-reactivity and tolerability of cephalosporins in patients with IgE-mediated hypersensitivity to penicillins. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2018; 6:1662-72.
ペニシリンに対し319回の即時型反応(主にアナフィラキシー)があり、少なくとも1種類のペニシリン試薬の皮膚試験が陽性だった252人に対し、3種類のセファロスポロン系抗菌薬、セファマンドール、セフロキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフェピムに対し皮膚検査と暴露試験を実施した。
背景
■ 1990年以降、ペニシリンに対するIgE依存性過敏症が確認された少なくとも30人を対象に行われた研究では、セファロスポリンによるアレルギー検査で0%から27%の陽性反応が認められた。
目的
■ セファロスポリンとの交差反応性を評価し、ペニシリンアレルギー患者におけるセファロスポリンを使用可能かの評価を試みた。
方法
■ ペニシリンに対し319回の即時反応(主にアナフィラキシー)を示し、少なくとも1種類のペニシリン試薬に陽性の皮膚試験を受けた参加者252人に対する前向き研究を実施した。
■ 全ての患者は、セファクロルに対する血清特異的IgE検査、3種類のアミノセファロスポリン類(セファレキシン、セファクロル、セファドロキシル)、セファマンドール、セフロキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフェピムによる皮膚試験を受けた。
■ 最後の5つのセファロスポリン系が陰性であった患者に対し、セフロキシムアキセチル、セフトリアキソンを投与し、アミノセファロスポリン系が陰性であった患者にはセファクロルとセファドロキシルを投与した。
結果
■ 99名(39.3%)は、セファロスポリンに対するアレルギー試験に陽性だった。
■ 具体的には、95例(37.7%)がアミノセファロスポリン系および/またはセファマンドールに陽性であり、これらはペニシリン系と類似もしくは同一の側鎖を持っていた。
■ セフロキシムアキセチルとセフトリアキソンで曝露試験を受けた244人は、全員耐性だった。
■ アミノセファロスポリン曝露試験を受けた170人のうち3人はセファクロルに、4人はセファドロキシルに陽性反応を示した。
結論
■ ペニシリン類とセファロスポリン類との交差反応性は主に側鎖の類似性または同一性に関連していると思われる。
■ ペニシリン系抗菌薬に対するIgEを介した過敏症を有するものは、ペニシリン系薬剤とは異なる側鎖を有するセファロスポリン系薬剤 (セフロキシム、セフトリアキソンなど) で治療することができ、治療前の皮膚試験では陰性だった。
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『ペニシリンアレルギーがあるから』として、多くの抗菌薬を使用できないと頭から考えるとかえって不利益が大きくなるため、適切な曝露試験が求められる。しかし、曝露試験はかんたんではない。
■ 現状では添付文書にペニシリン系抗菌薬に過敏症をもっている方に、セフェム系抗菌薬の使用は『慎重投与』になっています。
医療用医薬品 : セフトリアキソンナトリウム から引用。
慎重投与
ペニシリン系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
■ ABIM(Foundation | Advancing Medical Professionalism; 米国内科財団)もまた、「Don't overuse non–β-lactam antibiotics in patients with a history of penicillin allergy, without an appropriate evaluation.(適切な評価なしに、ペニシリンアレルギーの病歴を持つ患者で非βラクタム抗生物質を使いすぎないように)」としています。
■ 一方で、『使える薬剤を極端に少なくすること』は、かえって患者さんのリスクに繋がります。
■ ですので、側鎖を考慮しながら適切な曝露試験を行う必要性があるといえます。
■ ただし、曝露試験は行う側も、たいへん手間がかかり、またリスクも考えなければなりません。紹介いただくことは多いですが、かんたんではない試験があることも承知しておく必要性もあるでしょう。
今日のまとめ!
✅ ペニシリン系抗菌薬にアナフィラキシーを主な症状とするあきらかな病歴があっても、側鎖の異なるセファロスポリン系薬剤 (セフロキシム、セフトリアキソンなど)は使用できる可能性がある。